(社説)核燃料再処理 稼働やめ政策転換せよ

社説

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 日本原燃が建設している使用済み核燃料再処理工場青森県六ケ所村)は、安全対策の基本方針が新規制基準に適合している。そう認める審査書を原子力規制委員会が決定した。

 原子力政策の柱とされてきた「核燃料サイクル」の中核施設が、完成への手続きで大きな節目を越えたことになる。

 とはいえ、規制委の更田豊志委員長は会見で「核燃料サイクル全体の正当化は政策側の議論だ」という考えを示した。安倍政権は、福島の事故を境に原発をめぐる環境が一変したことを直視し、原子力政策を根底から見直すべきである。

 核燃料サイクルとは、原発で使い終えた核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、再び原発で燃やすことだ。資源に乏しい日本は核燃料を有効利用する必要があるとして、政府が1950年代から推進してきた。

 それから半世紀以上がたったいま、3・11後の再稼働が難航し、電力供給における原発の割合は格段に小さくなっている。新規の立地も難しく、今後、古い発電所が廃炉になるにつれて原発の存在感は薄れていく。将来的には、大事故の不安をなくすため、脱原発を実現しなければならない。

 このように原発が先細りする時代に、核燃料サイクルの意義は乏しい。現に先進国の多くは、経済性がないとして早くに再処理から撤退している。

 プルトニウムが原爆の材料になりうる点も問題だ。原爆6千発に相当する約46トンを国内外に保有する日本は、海外から厳しい視線にさらされている。

 仮に原燃の再処理工場がフル稼働すれば、年間800トンの使用済み核燃料を再処理し、7トンのプルトニウムが抽出される。だが、プルトニウム消費の本命だった高速炉は、原型炉もんじゅの廃炉で頓挫した。ウランと混ぜて普通の原発で燃やすプルサーマルも限られている。

 政府は余剰プルトニウムの削減を国際公約しており、消費量を超えないよう再処理する量を抑えざるをえない。わずかなプルトニウムを取り出すために、総事業費14兆円の再処理工場を動かすのは割に合わない。その費用が電気料金に跳ね返ることを思えば、国民の理解もとうてい得られまい。

 核燃料サイクルから撤退すれば、使用済み核燃料の処分など、これまで先送りしてきた難題に直面する。だからといってほころびの目立つ原子力に巨費を投じ続ければ、新たな時代を切り開くことはできない。

 世界的には、風力や太陽光などの再生可能エネルギーが急速に広がっている。今こそ政策転換を決断しなければならない。

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