第12回「熟年離婚はクリティカルなテーマ」金原ひとみさんが嚙みしめる幸せ

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聞き手=編集委員・森下香枝
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 熟年離婚に毒親、性的搾取、SNS炎上――。芥川賞作家の金原ひとみさん(41)が、出版界を舞台に、さまざまな社会問題を多彩な登場人物の視点で生々しく描いた小説「YABUNONAKA—ヤブノナカ—」を刊行しました。金原さん自身、2人の娘の母親で、昨年末に離婚したことを公表しています。自分の人生を作品にどう投影させているのか、聞きました。

――作中の登場人物はそれぞれ離婚や親子関係の断絶といったシビアな経験を重ねていきます。金原さん自身も私生活で昨年末、離婚したと発表しました。

 結婚が早かったので、あと少しで20年を超えるところでした。ほぼ熟年離婚ですね。娘は17歳と14歳です。

――離婚件数全体に占める熟年離婚(同居期間20年以上での離婚)の割合が過去最高を記録しています。配偶者の浮気だけでなく、DVやモラルハラスメント(精神的暴力=モラハラ)にも女性が我慢しなくなったことが背景にあるといわれています。

 私にとってもクリティカル(重大)なテーマですね。20年ぐらい前は、母親がワンオペで子育てを担い、キャリアを犠牲にすることを時代が許容し、女性たちは助けも得られず、全てを押し付けられてきた。ところが時代とともに社会や価値観が変わり、今はワンオペが非人道的なこととされるようになった。すると昔の我慢や苦労がまざまざとよみがえり、配偶者を許せなくなるんです。積もり積もったものに耐えきれず、決断する女性たちが増えていると思います。

――もう我慢しないと?

 もちろん関係を再構築したり、話し合いで解決したりする夫婦もいます。でも、もはや我慢してまで続ける必要もないんですよね。かつては配偶者のDV、モラハラ、お酒などは本人たちの問題とされてきましたが、今は社会がそれを許さなくなってきた。正直、私が結婚した20年前と価値観がここまで大きく変化するとは思ってもみませんでした。

――例えば、どのような?

 夫婦だけでなく、会社などでもパワハラやモラハラを許容しない空気感が醸成されています。もちろんまだまだ変化していない企業もありますが、後戻りはもうできないでしょう。

――離婚後、心境に変化は?

 明るくなったとよく言われます。自分でも視界が4Kぐらい明るくなった実感があります。いまだに寝る前にも起きた瞬間にも、離婚できたんだ、と幸せをかみ締めています。

――作中では、金銭問題や不貞…

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この記事を書いた人
森下香枝
編集委員|ここからTIMES編集長
専門・関心分野
終活、中高年のセカンドライフ、事件など

連載熟年離婚のリアル(全12回)

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