第8回ケアワークはなぜ過小評価される? 政治家の「特権的な無責任」一因

有料記事追い詰められる女性たち

聞き手 編集委員・清川卓史
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A-stories 追い詰められる女性たち

 ケアワーカーとして働き続け、ひとり親として子育てや親の介護を担ってきた女性が、高齢期に経済的な苦境に陥ってしまう――。誰もがケアなしで生きられないのに、なぜケアは社会的、経済的に評価されにくいのでしょうか。同志社大学大学院教授で政治思想研究者の岡野八代(やよ)さん(フェミニズム理論)に、この問題の根底にある歴史的、社会的な要因について聞きました。

【連載】追い詰められる女性たち

コロナ下で女性の自殺が増えました。育児、DV(家庭内暴力)、介護、雇用など複合的な理由で死へ追い詰められる女性たちの声に耳を傾け、解決策を探ります。

 ケア労働が市場経済のなかで軽視され、評価されないのはなぜか。いくつかの要因が重なり合っていますが、まず資本主義の進展にともなう歴史的な背景があると思います。

 資本主義経済で富をたくわえるには、商品である労働力をできるだけ安く確保する必要があります。そのために、労働力の再生産につながる家事や育児といった「再生産労働」はタダで、生物学的な「産む性」の女性が担うものとされてきました。

 女性による再生産労働、つまり家庭でのケア労働は、経済的に評価されないまま国家と資本家に搾取され続けました。いまの日本でも、ケア労働を女性にタダで押しつける社会構造が根強く残っています。

 次に、ケア労働は、自動車などの商品の生産活動と違って、何を作ってどんな価値を生み出しているのかが見えにくい、という特徴があります。つまり、市場経済ではその価値を測ることができません。

 さらに保育や介護について言うと、そのサービスを利用する乳幼児や高齢者には、サービスを提供する公的な制度を支える費用を支払う能力がないか、不足しています。

 サービスにかかる費用をどう見積もり、誰がどのぐらい負担するか、といった点は、常に政治の課題になります。ケアの提供者にいくら報酬を払うか、その値段は政治的に決まるのです。

 ところが日本の政治家は、自…

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    中塚久美子
    (朝日新聞専門記者=子ども、貧困)
    2023年4月21日17時0分 投稿
    【提案】

     7回にわたるシリーズ「追い詰められる女性たち」で伝えてきたのは、誰かをケアしている女性や適切なケアを受けられなかった女性たちです。ケアとは「生きる」ことと一体。そのケアの場に女性が押し込められたり、利用されたり、安く買いたたかれたり、搾取

    …続きを読む