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セブン―イレブン店長、6カ月間一日も休みなし 過労自殺で労災認定

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北川慧一

 コンビニ最大手セブン―イレブンの大分県内の店舗で店長を務めていた男性(当時38)が2022年に自殺し、6カ月間で一日も休日がない連続勤務を原因とした労働災害と認定されていたことがわかった。労災認定された連続勤務の期間としては異例の長さとみられ、コンビニの過酷な労働実態が明らかになった。

 労災認定は24年11月6日付。遺族側によると、男性は19年から、セブン―イレブン本部とフランチャイズ(FC)契約を結ぶ大分県内の加盟店で、店長として勤務。事業主である店舗オーナーに正社員として雇用された「雇われ店長」だった。商品の発注や陳列、レジ、清掃から、従業員の採用や勤務シフトの作成などまで担い、22年7月に自殺した。男性の妻は、少なくとも結婚した21年3月以降の約1年4カ月間はほぼ休みがなかったことなどによる過労で精神障害を発病したと訴え、労災を申請した。

「自らシフト穴埋め」

 精神障害の労災認定基準では、発病までの約6カ月間を評価期間とし、業務による強い心理的負荷があったかを検討する。1日の労働時間が特に短い場合を除き、1カ月以上の連続勤務は負荷が強いと例示している。

 この店舗を管轄する労働基準監督署は、男性が自殺する前日に重度のうつ病を発症したとした上で、発病前の6カ月間は一日も休日がなかったと認定した。連続勤務の理由は「自らシフトを穴埋めするなど、24時間営業の店舗運営を円滑に行うため」「深夜勤務を含めて人員を確保するため」とし、心理的負荷は相当強かったと判断した。

セブン本部「答える立場にない」

 オーナー側は、男性には過重…

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この記事を書いた人
北川慧一
経済部|労働キャップ
専門・関心分野
労働政策、労働組合、マクロ経済
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    古谷経衡
    (作家・評論家)
    2025年4月7日18時46分 投稿
    【視点】

     コンビニを巡る労働環境の劣悪さ等を描いた書籍として、2016年に上梓された『コンビニ店長の残酷日記(三宮貞雄著、小学館新書)』を筆者は真っ先に思い出した。  詳細は本書に譲るものの、本書は大手コンビニの多くがFC(フランチャイズ)加盟拡大の方針のもと、現場の店長や従業員が過度で過酷な労務環境に置かれていることを半ば告発したノンフィクションである。  当該記事を読むと、該事案はFC本部と被FC加盟店舗の関係というより、FC加盟店内におけるオーナーと「雇われ店長」の案件ということで、実際にどのような経緯があったのかを知る由は、現時点では無い。この店舗に限った固有の問題であったのか、どうかは今後の精査を待つべきであろう。  が、筆者が冒頭にあげた『コンビニ店長の残酷日記』によれば、そもそも日本にはフランチャイズ(FC)に関する包括的な規制法が無く、FC本部と加盟店という、彼我の力関係にFC本部側が安泰して、FC本部からの過大な要求を、現場の店長や従業員らがギリギリの労務環境で応じざるを得ないという、それこそ「残酷」な実態が赤裸々に開陳されている。  つまり、FC本部からの売り上げ・仕入れ目標がFC加盟店における現場に過酷に要求され、それを休日返上、家族団らんそっちのけで応えざるを得ないという状況が、一部では歴として存在することを該書は告発しており、本記事にある不幸な事案も、その文脈の中に存在していたのではないか、と類推できることは別段おかしくはない、と言わざるを得ないということだ。  また同書は、通常の小売店であれば存在しない「コンビニ会計」という特殊な売り上げ計算方式にも疑問を投げかけている。コンビニ会計とはなにか。ふつうの商売であれば、10個のおにぎりを仕入れて7個売れて3個売れ残ったら、売り上げは7個分であり、売れ残りの3個はロス(廃棄)として計上する。売れた7個の売り上げから、「粗利」を計算する。これが「ふつう」の商売だ。  しかし「コンビニ会計」の場合、その売れ残りの3個を含めた仕入れ部分のロイヤリティが、売れた・売れ残ったにかかわらず、FC本部に上納されるというシステムということだ。かいつまんで言うと、本部は売れ残りのリスクを負わず、そのロス・リスクをFC加盟店に押し付けていると解釈できる構造である。  むろん、昨今のコンビニ現場における過酷な状況が報道されるや、こうした「コンビニ会計」における過酷なFC加盟店の負担を抑える対策を、コンビニFC本社は提供しているようである。一定の売れ残り、つまり廃棄(ロス)にあっては、相当のロイヤリティの免責金額を設けている、という「救済策」も聞く。  が、「本部の意向に従わなければ、いつFCの契約を切られるか分からない」という、いわゆる「優先的地位の濫用」によって、少なくないコンビニFC加盟店の現場では、より過酷な販売ノルマの達成、これに伴う管理職(雇われ店長ら)の激務が発生したと考えるのは、そこまで不自然な推測ではなかろう。  筆者はなにも、とりわけコンビニのFC(フランチャイズ)方式が、全部悪で、搾取の構造にあると言っているわけではない。有望な商圏に自社の直営店を出店するとき、銀行融資が決定するまで、長い時間がかかる。上り調子の業態が急速に拡張するとき、自ら志願(自己資金あり)してFCに加盟してくれたほうが、FCグループとしては拡大速度は遥かに早くなる。とりわけ飲食業はそうであろう。繰り返すが筆者はFCがすべてダメで悪徳だと言っているわけではない。  ともあれ、前掲書『コンビニ店長の残酷日記』が記しているように、日本ではFCを規制する法律が薄弱で、FC本部と被加盟店の地位の格差が歴然であるなか、被加盟店の少なくない部分が、自らの人生や時間を犠牲にして、本部の方針に従い、過度な奉仕をせざるを得ない、という構造になっていることが問題だと感じているまでだ。  多くのFCグループは良心的といえるが、一部の倫理観が低いFCを糺すためにも、FCに対する包括的な法規制や、整然とした枠組みの構築は必要なのではないか。

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    常見陽平
    (千葉商科大学准教授・働き方評論家)
    2025年4月7日9時1分 投稿
    【視点】

    ■コンビニはビジネスモデルの見直しを  タイトルを見た際は「コンビニオーナー」が「店長」を兼ねているケースだと思っていたが、違った。「雇われ店長」のケースだった。絶句する話だが、被害者の店長はコンビニというビジネスモデルの犠牲者だと言わざる

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