第4回「なんで私ばかりが…」 夫へのフキハラ、やめられぬ専業主婦の無念

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編集委員・岡崎明子
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 月1回、地方に単身赴任中の夫(51)が、神奈川県内の自宅に帰ってくる。

 「大好き!」

 夫は、3人の子どもたちがいる前でも、臆面もなく女性(53)に抱きついてくる。

 ついでに、ササッと昼ご飯もつくってくれる。

 はたから見れば、家事にも子育てにも協力的で、妻思いの申し分ない夫だ。

 それでもこの20年間、女性は夫に対する不機嫌ハラスメントを止めることができない。

 九州地方の県庁職員だった女性が、国家公務員として本省(東京・霞が関)から出向してきた夫と結婚したのは31歳のときだった。ほどなく妊娠した。

 制度上は最長3年間、育休を取ることができた。だが夫は恐らくその間に、本省に戻るだろう。

 「私が仕事を辞めて、ついて行くことになるんだろうな。それなのに育休を取ったら申し訳ない」

 あまり深く考えることもなく、県庁を退職することにした。

 妊娠中は周りも気遣ってくれ、「いい母親になろう」と楽しみでたまらなかった。

 だが出産した途端、崖から突き落とされたような気分になった。

 母乳があまり出なかったこともあり、娘の体重はなかなか増えなかった。布おむつにこだわったから、洗濯も大変だった。

 泣きやまない娘と2人、ずっと泣いていた。子どもをかわいいとは思えず、今から思えば、産後うつ状態だったと思う。

 それなのに夫は育休を取ることもなく、子どもが生まれる前と同じように働いていた。

 「なんで私ばかりが……」

 怒りが抑えられず、夫への不機嫌を止められぬ日々が始まった。

ビリビリに破いた新聞紙の束

 ある朝、夫が出勤後、まだ読…

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この記事を書いた人
岡崎明子
編集委員|イチ推しストーリー編集長
専門・関心分野
医療、生きづらさ、ジェンダー、働き方
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    河野有理
    (法政大学法学部教授)
    2025年4月13日18時17分 投稿
    【視点】

    この連載の第一回では、フキハラ被害者の女性が以下のように夫側を評していた。 「私の世代でも、男性は自分の気持ちを表現することが苦手だと思います。ふつうは大人になる過程で、自分が不機嫌でいたら損だとか、周りに嫌な気持ちをさせてしまうと学ぶき

    …続きを読む