トランプ関税に徹底抗戦の中国 習近平氏が頼るものは?識者の見方

有料記事

聞き手・牧野愛博

 トランプ米大統領は9日、世界各国を対象に発動したばかりの相互関税の一部を90日間、一時停止すると発表しました。同時に中国への関税を145%としました。中国の対抗姿勢の背景や関税による経済への影響などについて、防衛研究所の飯田将史理論研究部長に聞きました。

 ――トランプ政権の高関税政策に対し、中国は一時、「最後まで付き合う」と表明するなど、徹底して対抗する方針を示してきました。

 中国が強気な姿勢をとる背景には大きく二つの事情があったと思います。中国は9日までの段階では、「トランプ氏は全世界を敵に回して貿易戦争を繰り広げている。グローバルサウス諸国や先進国も巻き込んでいるので、各国と連携すれば米国を追い込める。しばらく、がまんすれば米国が妥協する」と考えていたようです。

 もう一つは、国内的要素です。中国経済は停滞しています。中国軍の人事を巡る不満もあるようです。一般市民や軍、中国共産党の中に習近平(シーチンピン)国家主席体制への不満や反感が広まりつつあると思います。習政権として、ナショナリズムをあおって求心力を回復したい思惑があったのでしょう。

 しかし、主なターゲットを中国に絞ったトランプ氏の9日の発言で、最初の事情が大きく変わりました。中国ははしごを外された状況で相当焦っていると思います。中国内からは、トランプ氏が最初からこうした構図を狙っていたのではないかと疑う声も出るかもしれません。

【連載】読み解く 世界の安保危機

ウクライナにとどまらず、パレスチナ情勢や台湾、北朝鮮、サイバー空間、地球規模の気候変動と世界各地で安全保障が揺れています。現場で何が起き、私たちの生活にどう影響するのか。のべ340人以上の国内外の識者へのインタビューを連載でお届けします。

中国、「米国とのパイプ強化」より「米国への敵対心」との印象

 ――中国の対応をどうみますか。

 中国は米国への対抗関税を1…

この記事は有料記事です。残り1737文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【春トク】締め切り迫る!記事が読み放題!スタンダードコース2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
牧野愛博
専門記者|外交担当
専門・関心分野
外交、安全保障、朝鮮半島
トランプ関税

トランプ関税

トランプ米大統領の高関税政策が衝撃をもたらしています。金融市場は動揺し、貿易摩擦は激しさを増しています。世界経済は危機に向かうのか。暮らしにどんな影響を与えるのか。最新ニュースをまとめてお伝えします。[もっと見る]