(社説)日大の不祥事 本当に再生できるのか

社説

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 日本大学は本当に再生できるのか、疑念を抱かざるを得ない状況だ。

 アメリカンフットボール部の3年生部員が、学生寮で乾燥大麻と覚醒剤を持っていた疑いで逮捕された。この問題を受けて林真理子理事長らが開いた記者会見で、大学としての統治(ガバナンス)が機能していないことが露呈した。

 特に問題となっているのは、日大が植物片と錠剤を見つけてから、12日間も警察に連絡しなかった点だ。競技スポーツ担当の副学長は「大麻かもしれない」と思ったのに、すぐに警察に届けなかった。「自首させたいと考えた」とするが、到底納得できる説明ではない。

 昨秋に同部の部員が「大麻と思われるものを吸った」と自己申告した際の対応にも驚く。同部は「警察関係者に相談して立証が困難と言われた」として、口頭で厳重注意しただけで済ませた。副学長にも、今回の問題が起きるまで報告していなかったという。内々で済ませようとしたとしか見えない。

 こうした様々なレベルでの統治の不全を招いたのは、林氏の責任も大きい。スポーツについては「組織がわからない」などと遠慮があり、学長や担当副学長に任せきりだったという。

 大学職員のかたわら相撲部監督などを務めた元理事長を中心とする前体制は、スポーツ部門への絶大な影響力を背景に大学を仕切っていた。スポーツ部門の病巣を一掃しなければ日大の改革は成り立たず、特別に注意を払うべき領域であることは明らかだ。特に、悪質タックルという大きな問題を起こしたアメフト部については、より注意深くチェックすべき対象だった。

 前体制の不祥事を受けて、昨年7月に就任した林氏は、「マッチョで古い体質を変えたい」と理事や職員らを一新。過去に1人もいなかった女性理事を9人誕生させた。若手職員や学生らとも積極的に意見を交わし、学内からも「風通しがよくなった」と好感を持たれていた。だが今回は、新たな理事会も適切な統治ができなかった。

 林氏は会見で、今後はスポーツの改革にも着手すると表明。きめ細かく委員会を作るなどして体制を整える決意を示した。ただ、大学だけで学生7万人、教職員4千人という日本で最大の規模だ。隅々まで目をこらすには、重要な情報が目詰まりせず、適切な時期に理事長や理事会に伝わるような回路を早急にデザインする必要がある。

 日大に対する社会の視線はいっそう厳しくなった。問題点をつぶさに洗い出して反省し、組織風土の見直しを進めなければ、真の再生はおぼつかない。

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