(社説)サメ取引規制 国際ルール守る努力を

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 スルメイカやサンマといった身近な魚介の不漁が続くなか、日本は各国に対し、乱獲を防ぐ規制の強化を呼びかけている。その主張の説得力を高めるためには、議論の結果決まった国際ルールを率先して守る姿勢が不可欠だ。

 絶滅の恐れがある動植物の国際的な商取引を規制するワシントン条約締約国会議が昨年11月、54種類のサメを「付属書2」に掲載すると決めた。商業目的の取引には、輸出国政府の発行する許可書が必要になる。

 日本政府は、このうち53種は掲載を受け入れた。だが、日本の漁業者による漁獲量が多いヨシキリザメについては、規制を拒否する「留保」の手続きをとった。

 ヨシキリザメの規制は、それ自体の資源量に問題があるためでなく、絶滅が危惧されるほかのサメと見分けがつきにくいことが理由とされる。しかし、国連食糧農業機関(FAO)からは「体の色や形状で容易に識別できる」との指摘もある。日本政府も同様の見方だ。

 国際社会では、生きたサメのヒレだけを切り取って海に戻す漁法への批判が高まっているが、日本ではそうした捕り方は禁止されている。身もはんぺんなどに使われる。

 掲載を受け入れれば、公海で捕ったサメを日本を含む各国の港に水揚げする際にも、許可書が必要になる。水産庁によれば、漁獲してから水揚げするまでに許可書の発行が間に合わないケースが想定されるという。

 こうした点を勘案すれば、日本政府が掲載に異を唱えてきたことに一定の理由があるとはいえるだろう。

 一方で、憲法も前文でうたう国際協調主義の観点からは、自らもその枠組みに参加している国際ルールには、極力従う姿勢が求められる。日本は以前からワシントン条約の水産物の記載に留保を繰り返してきた。安易な留保を重ねれば、国際社会の信用を失いかねない。

 日本漁船によるヨシキリザメの漁獲の半分が海外の港で水揚げされている。この分は、日本が留保をしたとしても、許可書が必要になる見通しだ。漁獲の維持には、デジタル技術の活用などで水揚げまでに許可書を出せる態勢が必須になる。

 その仕組みが広く普及すれば、国内の水揚げを含め、留保自体の必要性も乏しくなるだろう。そうした方向での努力を続けるべきではないか。

 サメは中国による乱獲が懸念されており、日本にとっても重要な関心事だ。漁獲量の透明化や違法操業の排除なども含め、国際的な資源の保護に積極的に協力していくことが望ましい。

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