著名人の逮捕報道、過熱を危ぶむ声 専門家ら「法や人権ないがしろ」

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北野隆一 真田嶺 後藤遼太

 俳優の広末涼子容疑者の逮捕を受け、テレビ各局がニュースやワイドショーなどで大きく取り上げた。傷害事件の取り調べ時の様子をCGで再現したり、家宅捜索で自宅の特定につながる周辺の様子を流したりといった番組もあった。一連の報じ方について、識者からは「興味や好奇心に重きが置かれ過ぎている」と危ぶむ声も上がる。

 逮捕容疑は、静岡県内で交通事故を起こして搬送された病院で8日未明、看護師に暴行し、けがを負わせたというもの。逮捕は8日早朝で、報道各社は朝から速報で伝え、テレビ各局は取り調べ中の静岡県警掛川署前などから中継を行った。

 在京各局は、ニュース番組やワイドショーで時間をかけて取り上げた。

 同日夜の日本テレビ系の報道番組「news zero」は、「不審な行動」というテロップと共に、CGによる再現映像で事故直後や逮捕、取り調べ時の様子を報じた。警察OBが薬物の影響の可能性に言及する場面も流れた。

 TBS系の報道番組「ニュース23」でもCG再現映像を流し、「取り乱した状態で取り調べ難航」などと報じた。過去映像と共に、昔のプライベートなトラブルにも言及した。

 9日の送検の際は、各局が本人を乗せたとみられる警察車両の映像を繰り返し流した。

 テレビ朝日は8日の段階で「薬物検査へ」と速報を流し、家宅捜索を各局が速報で伝えた10日にはフジテレビが「違法薬物見つからず」などと報じた。自宅の外観や周辺の映像を流す番組もあった。

 容疑者逮捕を伝える各局のニュース動画はユーチューブにもアップされ、数十万回から200万回以上再生されたものもあった。

「報道もとに世間の風潮が一方向に」

 元裁判官で冤罪(えんざい)…

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この記事を書いた人
北野隆一
東京社会部
専門・関心分野
北朝鮮拉致問題、人権・差別、ハンセン病、水俣病、皇室、現代史
真田嶺
社会部|メディア担当
専門・関心分野
SNS、移民、国際情勢、ポッドキャスト
  • commentatorHeader
    安田峰俊
    (ルポライター)
    2025年4月16日2時5分 投稿
    【視点】

    悪いのはマスコミでしょうか? 確かに「悪い」ですが、一方で彼らは入ってきた情報を報じる生き物です。同じく「悪い」のは情報を流した側、すなわち警察(静岡県警)であるといえます。 いえ、警察が情報を開示すること自体は構いません。問題は、被疑者

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    江川紹子
    (ジャーナリスト・神奈川大学特任教授)
    2025年4月16日20時8分 投稿
    【視点】

     この件に関するマスメディアの報道を検証しようとするのであれば、それぞれのメディアが、権力機関のチェック役として機能したかどうかを見てほしいと思います。人々の興味・関心に応える情報発信だけでなく、権力の監視がメディアの大事な役割だからです。

    …続きを読む