第6回服役したトランプ関税の設計者 6年前に張られていた「二つの伏線」

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ワシントン=榊原謙
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 世界経済を混乱の渦に巻き込む「トランプ関税」。その設計に深くかかわることになる人物は、わずか1年前、米マイアミの刑務所の中にいた。

 2024年7月17日、4カ月の刑期を終えて出所すると、その足で中西部ミルウォーキーに飛んだ。彼の「チーム」はXでこう発信した。

 「最高なのはこれからだ」

 当日夜の共和党全国大会。超満員の支持者らが1分半にわたり男の名を呼び続けた。

 「ナバロ! ナバロ! ナバロ!」

 登壇したピーター・ナバロ氏(75)は力を込めた。

 「彼ら(バイデン政権)は私にドナルド・トランプを裏切るよう要求した。私はそれを拒んだ」

 経済学者出身で、第1次トランプ政権では通商担当の大統領補佐官だったナバロ氏。トランプ氏が敗れた20年の大統領選の翌年に起きた議会襲撃事件をめぐって、トランプ氏に不利に働きかねない議会証言を拒み、実刑判決を受けた。ナバロ氏は、高齢受刑者向けの80人収容の施設に収監されたという。

 老身にむち打つかのような行動に、自らへの忠誠心を最も重んじるトランプ氏は、ナバロ氏収監中の5月、米メディアに予告した。「私はピーターに必ず戻ってきてもらう」。約束通り、ナバロ氏を今度は通商・製造業担当の大統領上級顧問という要職で迎えた。閣僚らがほとんど新任で占められたなか、異例の再任となった。

「リカードは死んだ」

 ナバロ氏は、母子家庭で苦学…

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この記事を書いた人
榊原謙
アメリカ総局|米国経済担当
専門・関心分野
米国経済、世界経済
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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2025年4月20日1時31分 投稿
    【解説】

    トランプは今後もナヴァロを信頼し、登用し続けるだろうが、これまでのような中心的な役割ではなく、あくまでも政権に勢いを与える存在ということになるだろう。トランプ政権の基本的な信条は、伝統的な経済学や法学の考え方を採用せず、ナヴァロやミラーのよ

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