(社説)日銀政策点検 「コロナ後」は再議論を

社説

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 日本銀行が大規模金融緩和の効果と副作用を点検し、政策を微修正した。物価目標達成が見通せない中で持続力と機動性を高めたというが、手段のつぎはぎや、運用が不透明な部分も増えた。コロナ禍からの脱出が見通せた時点で、さらなる検証と政策の整理が求められる。

 日銀は13年に「異次元緩和」を始め、16年9月以降、短期のマイナス金利に加え、長期金利も0%前後に誘導している。加えて、ETF(上場投資信託)を大規模に買い入れる異例の政策も続けてきた。

 今回の点検では、こうした金融政策のもと、経済全体で需要が増え雇用も改善してきたと自己評価し、物価上昇率2%の目標達成には、この路線をさらに続ける必要があるとした。ただし、緩和の長期化や強化には副作用があるため、そこへの手当てをするという。

 具体的には、(1)ETFは年間12兆円の上限だけを残し、買い入れ額の目安をなくす(2)金利引き下げに伴う銀行収益悪化を和らげる仕組みをつくる――といった内容だ。

 ETFはいまのように株価水準が高い状況では買い入れ額を相当程度減らすとみられる。買い入れは、市場の値下がり不安を抑えるのが目的であり、削減は当然の措置だ。

 一方で目安をなくしたため、具体的な運用方針がみえにくくなった。買い入れ額は日々発表されるが、政策公表文には年間上限以外は「必要に応じて買い入れを行う」としか記されていない。コロナ禍のなかで危機対応の手段を残すことは理解できるが、政策指針としてあいまい過ぎる。どれほど減らすのか、より明確に示す必要がある。

 銀行収益の悪化への対応策も、その場しのぎの印象が拭えない。当面は、新型コロナ対応の融資をした金融機関に対し、その額に応じて日銀当座預金の金利を上乗せする。今後金利を引き下げた場合は、連動して上乗せ幅を増やすという。

 金利低下と貸し出し増の両立を狙う施策だが、仕組みが複雑なうえ、上乗せ対象の選びかたによって銀行への個別的な補助金の色彩が強まりかねない。将来の適用対象は「制度の趣旨に沿って決定」としか書かれておらず、あいまいさが残る。

 そもそもこの間の日本経済は、18年秋からの景気後退にコロナショックが重なっていた。先行きもワクチンの効果や海外経済の動向次第で、大きく振れかねない。様々な要因が絡み合った状況下では検証も複雑になり、今後の方針の選択肢も制約される。危機対応に万全を期しつつ、平時への道筋が見えた段階で再度議論を深めるべきだ。

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