(社説)自民党大会 責任政党と胸張れるか

社説

 7年8カ月に及ぶ長期政権を支えた「安倍自民」から「菅自民」に代わって初の自民党大会がきのう開かれた。

 菅首相は総裁演説で「新型コロナを一日も早く収束させる」と述べ、感染の再拡大防止に取り組む姿勢を強調した。安倍前首相が大会のたびに意欲を示した改憲については、「党是」としながらも、その「第一歩」として国民投票法の改正をめざす方針をあげただけだった。

 最大派閥に支えられた安倍氏から、無派閥の菅氏になり、首相官邸と党執行部の力関係は従前通りではない。自由闊達(かったつ)な党内論議が影を潜めた「安倍1強」下とは違う光景もみられるが、自民党が責任政党として十分な役割を発揮しているとは到底言えない。

 まずは、党所属国会議員の不祥事に対する対応である。

 その典型が河井克行・案里夫妻に対するものだ。公職選挙法違反の疑惑が浮上しても本人任せで、説明責任を果たさせない。党が渡した資金が買収の原資となっている可能性を指摘されても、真剣に解明に取り組まない。2人が離党すればそれでおしまいといわんばかりだ。

 元農水相の贈収賄事件にしても、所属議員の緊急事態宣言下の酒場通いにしても、幕引きを急ぐだけで、事実関係を調べ、必要な責任をとらせ、再発防止につなげるという、政党として当然の責務を果たしていない。

 次に、ジェンダー平等に対する真剣さの欠如である。

 杉田水脈衆院議員が性暴力に関連して「女性はいくらでもウソをつける」と発言して厳しく批判された際は、口頭注意で済ませた。東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長だった森喜朗氏の女性蔑視発言を受け、ボランティアの辞退が広がっても、二階俊博幹事長は「瞬間的」な動きと軽くみた。

 党大会で採択された運動方針に「女性が個性と能力を発揮できる公正な社会の実現」が盛り込まれ、今後は党のあらゆる意思決定に女性の参画を確保すると明記されたのは、前向きな一歩であるが、実際の行動を見極める必要がある。

 最後に、立法府が果たすべき行政監視の役割である。

 議院内閣制の下、与党が政府を支えるのは当然だが、政治や行政への信頼を傷つける事態に対しては、与野党の別なく、政府をただすのが国会議員としての務めではないか。桜を見る会の前夜祭をめぐる安倍前首相の「虚偽」答弁の放置など、許されるものではない。

 自浄能力を発揮し、政権を内側からチェックできるか。来たるべき総選挙で、有権者から問われることになろう…

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