(天声人語)カモノハシの引退

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 この春、各界各層の人々から晴れ舞台を奪い続ける新型コロナウイルス。引退する新幹線までが同じ目に遭った。きょう8日に予定されていた700系の東京―新大阪ラストランが中止に追い込まれた▼先頭車両の顔立ちから「カモノハシ」と呼ばれた。登場したのは1999年の春。車内の静けさ、騒音の小ささ、故障の少なさが評価され、東海道新幹線の主役の座を占めた▼「それ以前の新幹線の車両とは設計思想が異なり、最高時速の塗り替えにこだわりすぎませんでした」と京都鉄道博物館岡本健一郎さん(45)。高速鉄道の車両としては完成度が高く、「新幹線の進化の最終形」と呼ぶ人もあるそうだ▼新幹線の歴史をふりかえれば、車両の顔立ちは劇的に変わってきた。当方が子ども時代に初めて乗ったのは「団子っ鼻」と呼ばれた初代0系。後に続くモデルもその外観から「サメ」「鉄仮面」などと呼ばれた。単なる交通機関ながら、愛称が広まるところが新幹線たるゆえんだろう▼700系は今後も山陽新幹線の新大阪―博多を主にこだま号として走るが、東海道の東京―新大阪では今月1日で営業走行を終えた。新幹線網の花形と言われる区間である。会社勤めにたとえるなら、第一線…

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