歴博の研究者が語るデジタル史料と歴史学 膨大な分析、AIと協働

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聞き手・各務滋

 膨大な文章や画像が日々デジタル空間に蓄えられていく現代。人ひとりの人生まるごとだって記録できてしまいそうです。今が歴史になったとき、歴史家は歴史資料(史料)に目を通しきれるのか、ふと気になりました。歴史情報学に詳しい国立歴史民俗博物館(歴博)准教授の後藤真さんに、「未来の歴史」について聞きます。

 ――歴史の研究者は、史料の増加にどう対応しているのでしょうか。

 「これまでの史料であっても、昔の人の生活のすべてのものが残されていたわけではありませんよね。現代はたまたま大量に残っていますが、研究者はそのすべてを使う必要はありません。大切なのは、大量の情報の中からいかに必要な情報を見つけていくかであって、その技術の研究は情報学者らとの連携によってかなり進んでいます。大量のデータをAI(人工知能)で分析して必要な情報をピンポイントで抽出する技術と、マス(かたまり)で捉えて分析する手法の両面があります」

 「今は、例えば昔の津波の写真を探すとすると、目録(資料を説明する補足情報)に書かれていなくても、AIが画像解析によって津波の写真だと認識して見つける、といったこともできるようになり、検索の技術も進歩しています」

 「また、『江戸時代中期の関東地域の災害』で検索すると、そこからAIなどが言語解析をして、津波や地震、日照りなどの情報を抽出してくれるような『抽象度の高い検索』も、近い将来には可能になると想定されます」

 「音声データについては、難しいところがあります。歴博は民謡のデータをたくさん持っていますが、全部聴こうとしたらどれだけ時間がかかるかわかりません。やはり音声を大量にデータ処理するには、いったんテキスト化することは避けて通れない気がします。最近やっと音声データも自動でテキスト起こしができるようになってきましたが、昔の方言などはまだ難易度が高いです」

コンピューターにどこまで任せる

 ――デジタル化が歴史研究にもたらす利点は大きいのですね。

 「プラスの方が格段に大きいです。ただ、課題がないわけではありません」

 「たとえば検索して500件…

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この記事を書いた人
各務滋
オピニオン編集部
専門・関心分野
教育、オピニオン