「ゲームで稼ぐ市場」悪用し1.7億円 警察を驚かせた少年のスキル
電脳空間が少年犯罪の現場となっている。高校生や大学生らが関わり、計約1億6500万円を集めた不正アクセス事件では、高度なプログラミング知識や匿名化技術が使われていた。佐賀地裁での審理や取材から見えた事件の構図を紹介する。(少年たちの住所や年齢はいずれも逮捕時)
利用されたのは、ゲームのアカウントなどを売買する「リアルマネートレード」(RMT)=下記イメージ図=という仕組みだ。
RMT仲介サイトでは、誰かが強く育てたオンラインゲームのキャラクターのアカウント(ユーザーIDとパスワード)などを売買できる。あるサイトでは、ドラゴンクエスト10のレベル126のキャラクターが100万円で売られている。
ほとんどの国内ゲーム会社はこうした売買を利用規約で禁じているが、違法ではないという。
そこで多発しているのが、「ゲムトレC」と呼ばれる詐欺行為だ。被害者はパスワードを盗まれ、売上金もとられる=下記イメージ図。
ただ、佐賀地裁で審理された事件は、この「ゲムトレC」よりはるかに手が込んでいた。
被害者の一人は、佐賀市在住(被害当時)の20代男性。2023年3月、佐賀県警に「RMT仲介サイトでゲームアカウントを買ってお金を払ったのに、そのアカウント情報を教えてもらえない」と相談していた。男性が買ったのは《存在しないゲームアカウント》だった。
被害男性のユーザーIDは乗っ取られただけでなく、このユーザーIDから《存在しないゲームアカウント》が複数出品され、被害を広げていた。
佐賀県警は、滋賀、鹿児島両県警と3県合同捜査本部を設置。佐賀県警は、情報セキュリティーの国家資格「情報処理安全確保支援士」を持つサイバー捜査班のメンバーらを投入した。
捜査本部は、最終的に売上金の現金化に使われていたユーザーIDを特定。このユーザーIDの持ち主を探し当てた。しかし、この人物は、ネットの掲示板での誘いに乗り、融資を条件に免許証の写真などを送っただけで、詐欺グループ内にはいなかった。
詐欺グループにたどり着くため、捜査本部は通信記録と金、二つの流れを追った。見えてきたのは、北九州の少年を中心とした4人のグループだった。
被害者のユーザーIDに残さ…
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