第2回PFASの血中濃度、どう向き合う? 全米平均の750倍の女性は
2月下旬、米中西部ミシガン州ベルモント市の緩やかに曲がった山道沿いに、まばらに並ぶ家々の庭はどこも数十センチの雪に覆われていた。
地域住民のサンディ・ウィン(65)は2017年夏、州の環境当局者から電話を受け取った。「水質検査の結果を伝えるために訪問します」と告げられた。
数週間前、州から依頼を受けた検査員が、自宅の井戸水の検査に来た。飲用にも使っている井戸だった。そのときは「念のため」と言われた。ただ、結果は郵送や電話ではなく、担当者がわざわざ訪問して伝えるという。
「これは良くない知らせだ」とウィンは直感した。
突然の「飲水禁止」
州の担当者ら数人が自宅にやってきて伝えられた。「水を飲んではいけません」。自宅にペットボトルの水が運びこまれた。「ショックで、あぜんとした」とウィンはその日のことを振り返る。
水質検査の結果は、PFAS(PFOSやPFOAなどの有機フッ素化合物の総称)が1リットルあたり2万7千ナノグラム含まれているというものだった。米環境保護局(EPA)が当時、体重70キロの成人が毎日2リットルを70年間飲んでも健康に影響がないとする「生涯健康勧告値」として示していたのはPFOSとPFOAの合計70ナノグラムで、ウィンの自宅の井戸水はその数百倍のPFAS濃度だった。
ただ、州の担当者らはこうも述べた。「本当にそんなに高いなんて信じられない。また検査したい」
検査結果はミスではなかった。その後も何度も検査が行われたが、ときには初回の検査よりも高い値を記録した。周辺住民の家でも同じような結果が出た。人口約1万人の市のなかで、この地域の地下水だけがPFASに汚染されていることがはっきりした。
汚染の原因は
原因はウィンの自宅の向かいにあった靴メーカーが所有していた土地だった。革靴を製造する過程で防水剤を使い、それらを含む廃棄物を敷地内に捨てていたのが汚染につながったとみられている。
結果を伝えに来た州の担当者たちとの会話で、忘れられない場面がある。当時、PFASのことを何も知らなかったウィンが「危険ですか?」と尋ねたときだ。
彼らは「甲状腺や腎臓の病気、精巣がん、肝臓疾患など、いくつかの疾患と関連があることが分かっています」と回答した。ウィンは「なんてことだ。私の夫はがんで亡くなったばかりなのに」と声をあげた。
ウィンの夫のジョエルは前年、肝臓がんで亡くなった。がんを患った家族はほとんどおらず、診断からわずか3週間の命だった。
大変な事態が発生している――。部屋にいた全員がそう感じたことを、彼らの表情から悟った。
自分が普段飲んでいた水が汚…
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