トッド氏が語る「米国の敗北」 世界史の転換点で日本に大切なのは

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聞き手・池田伸壹
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 関税を振り回し、ロシアのウクライナ侵攻の停戦交渉にも乗り出した米トランプ政権。だが、ソ連崩壊を予測するなど独自の視点で世界を見つめてきた人類学者のエマニュエル・トッドさんは、そうした威勢の陰で米国は「敗北」しているのだと新著で指摘した。いまの米国と世界を、どう捉えているのか。

 ――ロシアによるウクライナ侵攻の終結に向け、米国とロシアが動き出しています。

 「私たちは世界史の転換点を迎えています。米国はロシアに対して、非常に屈辱的な敗北を経験しつつあります。政治的な世論操作と心理的な作戦によって、まだ明確にそう受け止めていない人も多いかもしれませんが、事実上の敗者は米国です」

 ――当事者であるウクライナも、その他の欧州諸国も蚊帳の外です。

 「これは事実上、ロシアと米国の戦争でしたから、当然ではないでしょうか。米国が主導した経済制裁が失敗し、ロシアは持ちこたえ、同盟国であるドイツなどの欧州の方が(ロシアの天然ガス供給カットなどで)より深く傷つきました」

 「そして2023年のウクライナによる反転攻勢など、米国が支援した軍事作戦が失敗したことが、今日の結果を招いたのです。私は、こうあるべきだとか、何が正義かといった観点からではなく、歴史の視点から語っています」

 ――これでウクライナでの流血は終わりますか。

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 「戦争が終わる、と宣言する…

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    藤田直哉
    (批評家・日本映画大学准教授)
    2025年2月26日5時0分 投稿
    【視点】

    トランプ当選が、ロシアによる情報工作・世論操作による「敗北」だと示唆している点が、明晰だと感じました。ロシアによる工作は、その社会に存在する問題、脆弱な部分を焚きつけ、ロシアの都合のいい政権を確立し支持させるように行われます。アメリカはそれ

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    大川千寿
    (神奈川大学法学部教授)
    2025年2月26日8時19分 投稿
    【視点】

    トッド氏の指摘は、米国、国際秩序に関する大局的な認識をアップデートする必要性に気づかせてくれるものです。 現在沖縄に滞在して、いろいろな方のお話を伺っています。沖縄も米国の動向には少なからず影響を受ける位置にあるかと思いますが、米国と同盟

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