教育勅語の「中身はいい」? そう言いたい欲望の背景にあるもの

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聞き手・田中聡子

 広島市長が職員研修の中で教育勅語の一部を引用していたことが、昨年、明らかになりました。政治家などからしばしば出る教育勅語を擁護する発言。「中身はいい」と言いたい欲求の背景に何があるのか、歴史学者の長谷川亮一さんに聞きました。

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消される「天皇のため」という目的

 戦後、しばしば教育勅語を擁護する発言が物議を醸してきました。政治家や財界人など発言者はさまざまですが、擁護の仕方はワンパターンで、要は「中身はすばらしい」「普遍的なことが書かれている」です。広島市長の発言にも、「またか」とあきれます。

 いうまでもなく、教育勅語は戦前の忠君愛国主義の教育を生んだものであり、天皇のために道徳的であれ、いい国民であれと説いています。それなのに擁護する人たちは、歴史的文脈や天皇の存在を切り離して、「父母ニ孝ニ」や「夫婦相和シ」などの徳目だけを取り出して評価します。「天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」、つまり「永遠に続く天皇の運命に命を捧げなさい」という目的が消されているのです。

「口語訳」が広めた誤訳

 教育勅語から天皇を消し去れ…

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