第3回「中二病」で始まったロシア研究 ドストエフスキーは「重いラノベ」

有料記事沼野恭子×小泉悠×ロシア ウクライナ侵攻2年

聞き手・構成 根本晃

 ウクライナ侵攻を続けるロシアという国をより深く知るために、沼野恭子・東京外国語大名誉教授(現代ロシア語文学)と小泉悠・東京大先端科学技術研究センター准教授(ロシア軍事・安全保障)が異色の対談を行いました。最終回はロシア文学についてユーモアを交えて議論しつつ、2人のロシアとの出会いを振り返ります。

 ――お二人がロシアに関心を寄せたきっかけはなんだったのでしょうか。

 沼野 中高時代にロシア文学に傾倒しました。自宅に世界文学全集があり、各国の文学を読み比べて一番しっくりきたのがロシア文学だったんです。

 当時、「なんのために生きているのだろう」などと実存的な悩みを抱えていたのですが、トルストイの「アンナ・カレーニナ」のリョービン(農地改革に取り組む不器用な理想家の青年)という登場人物が自分に重なっていました。

 19世紀のロシアという遠い世界で、自分と同じことに悩んでいる人がいる。そんな不思議さに引き寄せられました。

 小泉 僕の場合は「ロシア語の変な文字(キリル文字)がわかったらかっこいい」とか、「(ソ連崩壊によって情報が公開され始めた)ロシア軍の兵器について知りたい」といった「中二病」的な興味の対象としてロシアと関わり始めました。

 中二病って「俺は人と違う特別な存在だ」と振る舞ってしまう現象だと思うんですが、その引っ込みがつかないままこれまで研究してきたようなところがあります。

 沼野 それなら私も中二病ですよ(笑)。

【連載】沼野恭子×小泉悠×ロシア

ウクライナ侵攻が始まってまもなく2年。国際社会の批判や経済制裁を受けながらも戦争を続けるロシアとは、一体どんな存在なのでしょうか。ロシアをよく知る2人による、異色の対談から見えたものとは。

小泉氏 「読んでいて『あぁ、恥ずかしい』」

 小泉 ドストエフスキー(1821~1881)の作品は中二病的な人間ばっかりです。

 「罪と罰」のラスコーリニコ…

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