しなの鉄道ピンチ 「地方の鉄路を残すため」線路撤去費などの支援を

遠藤和希 北崎礼子
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 コロナ禍などの影響で業績が落ち込む長野県出資の第三セクター・しなの鉄道(上田市)について、維持管理の費用がかさんでいるとして、長野県などは14日、支援を国に要請した。長すぎる駅のホームを短くするなどのスリム化を図り、コスト削減につなげる考えだ。

 JR信越線は1997年10月に高崎―長野間の新幹線の開業で並行在来線となった。その際、しなの鉄道が軽井沢篠ノ井間をJR東日本から継承した。その後に新幹線が金沢に延伸すると、長野―妙高高原間も「北しなの線」として引き継いだ。

 しかし、2019年の台風被害による一部区間の運休や新型コロナなどもあり、19年度からは赤字が続く。今年度は1億3900万円の赤字となる見通しで、5期連続の赤字が見込まれている。

使わなくなった特急路線 老朽化で負担に

 しなの鉄道や県によると、信越線は特急が走っていたために駅のホームが長いことや、高度な設備を引き継いでいることなどから、維持管理コストが重荷となっている。県の担当者は「長い年月が経ち、老朽化で整備も必要になっている。新しい線路の整備に支援はあるが、地方での鉄路を残していくために規模縮小に対する支援を求めた」。使われなくなった線路の撤去などを検討しているという。

 14日は阿部守一知事のほか、土屋智則・しなの鉄道社長や花岡利夫・東御市長らが国土交通省を訪れ、斉藤鉄夫国交相に要望書を提出。規模縮小のための支援や交通系ICカード乗車券導入の支援を直訴した。

 今後、しなの鉄道は数十億円超をかけて、信濃追分―上田間(32・8キロ)と黒姫―妙高高原間(8・4キロ)の複線区間を単線化することも検討している。

続く赤字 国交相に直訴

 国交相との会談後、阿部知事は「(しなの鉄道については)コロナ禍で非常に厳しい経営となっており、老朽化で脱線事故も起きている。持続可能な形で安全を確保し、利便性の向上をしたいが、費用の捻出が大きな課題となっている。大臣からは前向きな発言もあり、地域一同頑張って取り組みたい」と話した。

 土屋社長は「コロナ禍と人口減少の加速を踏まえ、適正な規模にする必要がある。今も82%しか客足が戻っていない。将来に向けて存続するなら、今やらないといけない」と訴えた。(遠藤和希、北崎礼子)

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