リニアで下車したくなるサガミハラに 観光協会が訪日外国人客に注目

三木一哉
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 神奈川県内3位の人口を擁する都市でありながら、名所が乏しく、観光客も少ない相模原市。地域の「のびしろ」を活用しようと、相模原市観光協会がインバウンド訪日外国人客)のモニターツアーを初めて実施した。インバウンドの誘致活動としては後発組だが、外国人たちはサガミハラで何を見て、何を感じたのか?

 市観光協会が今秋から、観光庁の補助金を得て、関東一円の台湾、中国、マレーシアなどの在日外国人や家族を招き、計3回で67人が参加するツアーを企画した。今月2~3日に開催されたツアーでは、「小原宿本陣」「さがみ湖リゾート プレジャーフォレスト」「相模の大凧(おおだこ)センター」などを回った。コースをつくるにあたって、観光協会は「日本文化と訪問先での体験を重視した」という。

 ツアーのハイライトに置いたのが、江戸時代から伝わる「相模の大凧」体験だ。南区の大凧センターを訪れた参加者23人は、相模の大凧文化保存会メンバーの説明を聞きながら、センターに展示された巨大な八間凧などを眺め、大凧まつりの由来などについて学んだ。さらに保存会の指導を受け、好きな絵や文字を入れ、小型の凧を自作した。

 「おーっ、揚がった」

 近所のすし店での昼食をはさんで、午後は相模川の河川敷へ移動し、一行は保存会のはんてんを羽織って、つくった凧を揚げた。子どもだけではなく、大人のグループも強風の中、うまく風に乗って高々と揚がった凧に大喜び。保存会が所有する大型の1辺5・4メートルの三間凧にも挑戦した。

 一行はこのほか、かつての参勤交代の街道筋に残る江戸時代の宿だった緑区の小原宿本陣と、展示施設・小原の郷を見学。プレジャーフォレストでは、地元の文化団体、城山町祭囃子(まつりばやし)連絡協議会の協力で、お囃子を鑑賞、地元の味である「かんこ焼き」づくりも体験した。

 参加した千葉県在住の台湾人、陳湘頴さん(40)は「いろいろなものを見ましたが、自分の凧を揚げるという体験は楽しい。台湾にも凧揚げはありますが、こんな大きな凧は見たことがない」。相模原については「名前は知っていたが、箱根や小田原へ行く途中の地名というぐらい。降りたことはなかった」と話した。

 観光協会の小野沢美那・事務局次長は「ツアーの内容に自負がありました。伝統文化を支える団体から協力してもらうことができて、いいものができた」と手応えを感じていた。

 観光、特にインバウンドの誘致に苦戦している同市がこうした事業に取り組み始めた視線の先には、2027年以後のリニア中央新幹線開業がある。市は、緑区の橋本駅の隣接地に設置される神奈川県駅(仮称)での停車を増やすためにも「降りたくなる駅」にしたい、と知恵を絞る。

 県の22年の入込(いりこみ)観光客調査によると、県内7地域のなかで、相模原市を含む相模湖・相模川流域エリアは707万人で6位。トップの横浜・川崎エリア(5743万人)から、5千万人引き離されている。

 インバウンドの動向についても同様だ。19年度の県外国人観光客実態調査では、県内13地域の中で、相模原を外国人観光客が訪問先、訪問予定先として選んだ割合は1・4%で8位。首位の横浜54・8%とは大きく水をあけられている。

 ベッドタウンとして発展した都市で、歴史的な名所や祭りも少ない。ホテルも二十数軒で、多くは相模原駅、橋本駅前のチェーンのビジネスホテルだ。

 手応えのあった大凧も、まつりは1年に1度の催事で、常時、開催されているわけではない。それでも、協力した保存会の井上毅事務局長は「海外の人にも相模の凧の魅力を伝えられてよかった」と喜んだ。

 市は今後、モニターツアーで外国人らに好評だった場所などを精査し、「のびしろ」として生かしていく構えだ。(三木一哉)

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