大学ファンド「統制強化」への懸念 研究力低下の真因と必要な施策は
世界トップレベルの大学をつくろうと政府が創設した「大学ファンド」の支援先候補に東北大が選ばれた。10兆円規模の官製ファンドの運用益を数大学に配るという前例なきプロジェクトは、日本の研究力を再浮上させる特効薬となり得るのか、それとも大学のあり方を変えてしまう劇薬なのか。高等教育政策や大学改革の歴史に詳しい石原俊・明治学院大教授に聞いた。
進む「選択と集中」とトップダウン化
大学ファンド制度は、今世紀に入って進んだ大学の「稼げる化」と「国家主義化」の悪弊を、更に拡大するものです。
2004年の国立大学法人化で、大学の基盤的資金である国からの運営費交付金は、10年で約1割も削減されました。「選択と集中」を進めるため、かわりに競争的資金、つまりプロジェクト型の時限つき補助金が拡充されました。
第2次安倍政権下では「大学ガバナンス改革」の名の下、研究・教育・人事における学長や理事長への権限集中が進みます。従来は教授会などの専門家集団によるピアレビュー(相互評価)による意思決定が尊重されていましたが、こうした大学自治の本丸部分もトップダウンで左右できる法改正が行われました。
結果、学長が現場のニーズを…
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