イスラエル攻撃の理由は? ガザ取材した元中東アフリカ総局長に聞く
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは7日、イスラエルに対する大規模攻撃を始めました。パレスチナとイスラエルはなぜ対立し、今回の攻撃にはどのような背景があるのでしょうか。ガザ地区の取材経験もある元中東アフリカ総局長の翁長忠雄・現アジア総局長に聞きました。
――パレスチナとはどういう場所でしょうか。
昔から地中海の東側のアラブ人が住んでいた地域をパレスチナと呼んでいました。今でいうパレスチナはガザ地区とヨルダン川西岸を合わせた地域を指します。
パレスチナも一枚岩ではなく、イスラエル側と和平交渉を目指すファタハが事実上統治するヨルダン川西岸と、イスラム法にのっとった統治を目指し、テロも辞さない「過激派」とされるハマスが支配するガザ地区に分裂しています。
――なぜイスラエルと対立しているのでしょうか。
まず2千年以上前の歴史から振り返る必要があります。2千年以上前にはこの地にはユダヤ教を信じるユダヤ人の王国がありました。しかしこの王国がローマ帝国に滅ぼされるとユダヤ人は世界に散り散りになります。その後ユダヤ人に代わって入ってきたアラブ人がこの地域に2千年にわたって住むようになります。
問題が顕在化したのは19世紀です。世界中に散らばっていたユダヤ人が自分たちの国を作ろうというシオニズム運動を始めます。そこに第1次世界大戦を背景にイギリスがこの地域に関わってくることになります。
イギリスは戦争資金を得るために資金力のあるユダヤ人に近づき、ユダヤ人国家の建設の支持を約束します(バルフォア宣言)。一方でアラブ人にも当時この地域を支配していたオスマン帝国と戦うのであれば独立国家の支持をすると約束します(フサイン・マクマホン協定)。またフランスともこの地域を分割支配する密約を取り交わしました(サイクス・ピコ協定)。いわゆるイギリスの「三枚舌外交」です。
第2次世界大戦ではユダヤ人がナチスから迫害を受け、大変な思いをします。この経験を通してユダヤ人は自分たちは「国を持たないといけない」という意識を改めて持ち、国際社会もユダヤ人に同情をします。そして1947年にこの地域をアラブ人とユダヤ人でそれぞれ分割し、エルサレムを国際的管轄にする「パレスチナ分割決議」が国連で採択されました。
こうしてユダヤ人の国家「イスラエル」が建国されますが、アラブ人側からすれば自分たちが長く住んでいたところに急に別の国が建設されることに反発します。そこでエジプトやシリア、イラクといったアラブ諸国も加勢してイスラエルと戦うという構図で、4回にわたって戦争が起きます。
国際化するパレスチナ問題
――一地域の問題がなぜ国際…
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イスラエル・パレスチナ問題
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