砂糖と塩、見た目だけで区別せよ! AI VS 研究者 北大の挑戦

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桜井林太郎

 見た目では判別しづらい砂糖と食塩。取り違えて料理の味付けに失敗した経験のある人もいるかもしれない。そういった固体の混合物の比率を、画像から人工知能(AI)で予測するシステムを、北海道大学の猪熊泰英教授らの研究チームがつくった。砂糖と食塩で試したところ、実際の比率との平均誤差は4ポイントでおさまり、熟練研究者の観察眼をはるかに上回った。

 砂糖と食塩のような明らかに異なる物質同士だけでなく、同じ化学式だが構造が異なる物質などでも高い精度で予測できた。事故を防ぐための化学プラントの反応監視や、研究者の育成などに役立てたいという。

 近代細菌学の祖、フランスのルイ・パスツール博士は、酒石酸塩という物質を注意深く観察し、鏡で映したときのように左右の向きだけが異なる「鏡像異性体」の存在を発見した。

 研究チームは、熟練した研究者が日々の実験から、混合物に目的の化合物がどの程度含まれるかを、見た目だけで判断できる場合があることに注目。AIに機械学習させて予測できるのではないかと考え、まず砂糖と塩で試してみた。

 様々な比率で混ぜ合わせ、平面上に薄く平らにして撮影した写真300枚とその比率をAIに機械学習させ、予測モデルをつくった。次に別の100枚で比率をそれぞれ予測させたところ、平均誤差が3・9ポイントという高い精度でおさまった。

 例えば、砂糖70%・食塩30%の複数の画像を、砂糖69~72%・食塩28~31%と予測していた。

 10枚の写真で比率を予測させ誤差の小ささを研究者ら50人と競わせたところ、AIは勝率約9割で圧勝。予測に使う時間も人なら10枚で数分かかるのが、AIなら2分程度で100枚以上できるという。

■パスツールを超える観察眼…

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この記事を書いた人
桜井林太郎
科学みらい部
専門・関心分野
環境・エネルギー、先端技術、医療、科学技術政策
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    鳥海不二夫
    (東京大学大学院教授=計算社会科学)
    2023年10月12日17時0分 投稿
    【視点】

    世間は生成AIの話題でにぎわっていますが,もともと機械学習等のAIはここで紹介されている画像認識等でよくつかわれています.特に,2010年代から深層学習を使うことで多くの場面で使えるようになり,多くの分野で活用されています. 機械学習ではと

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