第15回外界に動揺するオウム信者の子 「尊師は悪くない」「げんせのバカ」

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森下裕介
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 都心の地下鉄で猛毒サリンがまかれ、14人が死亡、6千人以上が重軽傷を負った地下鉄サリン事件から20日で30年になる。オウム真理教事件は、カルト宗教が子どもたちに深刻な被害を与えることを示した。オウムの名は消えたが、その後もカルトが社会に与える影響は続いている。

 「子どもを返せ」「拉致するな」。1995年4月14日午後2時半ごろ。オウム信者の怒号が飛び交う中、バスから次々に降りてきた子どもたちは、山梨県中央児童相談所(甲府市)に一時保護された。

 児相の記録によると、教団施設から突然外の世界に移った子どもたちには動揺の色がみられた。職員に「ここは現世?」と聞く子どもや、安心させるため頭をなでようとした職員に向かって、「頭を触っちゃいけない」「尊師のパワーが抜けてしまう」と訴える子どももいた。

 子どもたちが施設に入った経緯については「自ら積極的に出家した児童は少ない」「親の道連れとなって出家した児童は、現世の生活をあきらめなければならなかった」とある。保護の際、自分の判断で施設に残った子どももいたという。

 保護から約1カ月後の5月16日、松本智津夫麻原彰晃)元死刑囚逮捕の知らせが、児相のテレビに映し出された。子どもたちは「でっち上げだ」「尊師は絶対悪くない」と言いながら、食い入るように見ていたという。

 子どもの日記とみられる文書には、その数日後の日付で「はやくオウムにかえせ」と記されていた。ひらがなやカタカナの練習と並んで「げんせのバカバカ ゆうかいはんにん」と書かれたページもあった。

 保護後1カ月間の子どもたち…

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この記事を書いた人
森下裕介
ネットワーク報道本部|地方裁判担当
専門・関心分野
司法、刑事政策、人権

連載あの時~いま 地下鉄サリン事件30年(全15回)

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