「積立王子」の退任劇 親会社とすれ違った、運用会社のあるべき姿

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東谷晃平 編集委員・中川透
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 個人投資家に人気の運用会社、セゾン投信の中野晴啓(はるひろ)前会長(59)が、6月末に突然退任した。長期の積み立て投資を著書や講演で訴え、「積立(つみたて)王子」と呼ばれた名物経営者だ。創業期から率いたが親会社と路線がずれ、事実上の更迭となった。NISA(少額投資非課税制度)の拡充という追い風が吹くなか、ファンの多い運用会社で何が起きているのか。

 東京・池袋の高層ビル「サンシャイン60」の52階。親会社クレディセゾンの林野(りんの)宏会長(80)の部屋に、中野氏は4月5日、呼び出された。

「やってきたことは失敗だった」 

 「あなたのやってきたことは失敗だった」。セゾン投信を16年前に始める際、慎重論もあるなかで背中を押してくれたのが、当時社長の林野氏だったという。

 中野氏は言う。「彼の力で会社をつくれ、苦しいときも守ってくれた。でも、今までと違うベクトルの会社にするので、僕は邪魔だからやめてくれとなった。追い出されました」

 何が「失敗」だったのか。

 セゾン投信がめざしてきたのは、長期の資産形成につながる投信の普及だった。業界では「回転売買」という手法が広がっていた。

 証券会社は販売手数料を稼ぐため、顧客に次々と乗り換えてもらえる新商品を運用子会社につくらせた。

 一線を画すため、セゾン投信は長年2本の投信に絞り、証券会社を通さずネットで直接売る直販を拡大。契約者は15万人、運用額は6千億円超にまでなった。

 一方、親会社の林野氏の言葉から中野氏が感じとったのは、「規模」への不満だった。北尾吉孝会長兼社長(72)率いるSBIホールディングスの急成長と比較されたという。

 同社は買収などで規模を拡大し、2017年度に1兆円弱だった運用額を24年度中に10兆円にする計画。セゾン投信も5兆円規模にするため、やり方をまったく変えると中野氏は宣告されたという。

総会で相次ぐ質問 親会社の答えは

 セゾン投信が中野氏退任を公…

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この記事を書いた人
中川透
経済部兼Sundayマネー面編集長
専門・関心分野
くらしとお金(資産運用、不動産、相続など)