米研究所が描いた「台湾有事」のリアル 「ピュロスの勝利」とは?

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アナザーノート 佐藤武嗣編集委員

 経済・軍事的台頭を続ける中国への警戒感が漠然と漂うなか、昨年2月に起きたのが、ロシアによるウクライナ軍事侵攻でした。その光景を、アジアに重ね合わせ、「台湾有事」への懸念も、国内外で加速しているように思います。「インド太平洋で同じことを起こしてはならない」。中国を念頭に、岸田文雄首相がそう語ったように、日本の政府・与党は「危機」を訴え、防衛費を倍増させ、「反撃能力」という名の敵基地攻撃能力保有を宣言しました。ただ、「台湾有事」と聞いて、具体的にどんなことが起き、日本にどのような形で波及するのか、想像できるでしょうか。

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2026年を想定

 そんな台湾有事の「リアル」を垣間見ることができるのが、米有数の保守系シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」が先月9日に発表した、台湾有事シミュレーションです。165ページに及ぶ報告書を読み込み、そのポイントを共有したいと思います。

 「有事」はいつ起きるのか。想定は、2026年です。「侵攻は、いつの時代も同じように始まる」。中国による戦闘行動が始まってから最初の数時間で、台湾軍の航空機と艦艇が、中国の砲撃によってほぼ壊滅状態に。中国海軍の艦艇が台湾の周囲を取り囲み、島への航空機や船舶の侵入を阻止。何万もの中国軍兵士が、水陸両用艦などで台湾海峡を渡り、同時に空挺(くうてい)部隊が上陸拠点の後方に降下し、台湾への着上陸作戦を展開する。これに対し、台湾の地上部隊も、中国の砲撃を受けながら、海岸線で必死に抗戦する――という内容です。元国防総省幹部や退役軍人らが参加し、設定の異なる24通りの戦闘シナリオ(ウォーゲーム)について、計3350万回以上シミュレーションしたといいます。

 非公開で行われることが多い…

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