【そもそも解説】献金被害は家族も 救済の制度設計、何がハードル?

有料記事そもそも解説

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 宗教団体に高額な寄付をしてしまった信者本人に代わって、家族が寄付を取り消したり、お金を取り返したりできるような仕組みを作れないのか――。当事者の訴えを受けて第三者の取り消し権などについて与野党が制度設計を検討しています。ただ、本人の自己決定権など憲法で保障された権利にも関わり、与野党の主張には溝があります。隔たりの根底にあるものは何か。Q&A形式でポイントを整理しました。

 Q なぜ家族にも寄付を取り消せる権利が必要だといった議論が出てきたの?

 A きっかけになったのは、安倍晋三元首相の銃撃事件だ。容疑者の母親は「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の信者で、1億円以上を寄付したとされている。

 マインドコントロール下にある信者は自らすすんで寄付するため、そもそも被害という意識がない。寄付が高額になり、生計を共にする家族が困窮を余儀なくされるという構図がある。こうした訴えが宗教2世などの当事者からも上がるようになった。

 Q 支援する弁護士らへの相談も家族からが多いみたいだね。

 A さまざまな法整備を政府に提言した消費者庁の有識者検討会でも、こうした信者家族の「被害」がテーマになった。「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の紀藤正樹弁護士は、家族が介入できる制度の検討を求めた。

 Q どういう制度がありえるの?

 A 紀藤弁護士が参考になるとして検討会の場で紹介した過去の制度がある。現在の成年後見制度の前身にあたる「禁治産(きんちさん)・準禁治産」制度と呼ばれる。

 Q 禁治産って耳慣れない言葉だね。

 A 財「産」を「治」めることを「禁」止された、といった意味だ。

 準禁治産制度では、判断能力が不十分な人と並んで、「浪費者」を保護するために、家庭裁判所が宣告をして、本人に「保佐人」をつける仕組みがあった。

 Q 浪費者?

 A そう。法務省によると、一律の基準はなかったが、「思慮なく、お金を使い果たす癖のある者」と解されていた。お金の使い道は本来、本人の自由で、「私的自治の原則」とも呼ばれるけど、「浪費者」は財産に関する権利を制限されていたんだ。旧統一教会の問題でも以前はこの規定を使って家族による財産保全の対応をできていた、と紀藤弁護士は訴えた。

 Q 家族、親族の財産を守るための制度でもあったんだね。

 A ただ、1999年の民法改正で現行の成年後見制度に衣替えしたときに、この規定はなくなった。「自分のことは自分で決める」という自己決定権を尊重しようという点が大きな改正理由だ。

 Q 自己決定権を尊重する流れの中で、新しい制度設計はどう考えたらいいの?

 A 信者家族からすると、家…

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