西九州新幹線は「追い風」になるのか 短い路線、集客力に課題も

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神谷毅 岡田真実 加藤裕則

 JR九州の西九州新幹線(武雄温泉―長崎)開業から3週間。自治体や財界は「観光の起爆剤に」と期待感を高める。ただ、66キロと短く、博多ともつながっていないため、継続的な集客力が大きな課題となりそうだ。新幹線という「ハコモノ」をどう生かすかが問われている。

 地元グルメを楽しめる特別列車の運行に、長崎の街のお勧め散策コースの紹介、佐賀・呼子名物のイカ刺しづくり……。JR各社と長崎、佐賀両県は今月から、観光客誘致を強化するため、体験型イベントの企画やお得な旅の紹介などをするキャンペーンを共同で始めた。

 2日、長崎駅であったキャンペーンの式典で、長崎県の大石賢吾知事は「両県が実施することで相乗効果が発揮され、西九州新幹線の誘客効果を最大化することにつながる」と力を込めた。

 西九州新幹線に特に強い期待を寄せるのが長崎の経済界だ。長崎市は2025年の訪問客数の目標を、コロナ前より30万人ほど多い730万人と定める。

 長崎商工会議所の松永安市・専務理事は「長崎には追い風が吹いている。これをものにしないといけない」と語る。「長崎市だけではなく、県南部の島原半島や佐賀県など、西九州全体を視野に入れた振興策が大事になる」

 「追い風」は新幹線以外にもある。国際会議もできる「出島メッセ長崎」が昨11月にオープンした。会議に参加する客数を同市は25年に173万人と見込む。長崎国際観光コンベンション協会の豊饒(ぶにゅう)英之・事務局長は「いかに会議開催に伴う経済効果を高めるかが課題。歴史的な建物など長崎らしさを感じられる場所でレセプションを開くなどして、会議参加者らの満足度を高めたい」とする。

 だが、中長期的にみると長崎の経済の見通しは厳しい。

 長崎県の人口の社会増減率は21年に前年比約0・4%減と、全国で最もマイナス幅が大きかった。経済成長への影響が大きい生産年齢人口(15~64歳)はこの10年間で約18%も減った。

 長崎経済研究所が7月末から8月にかけて県内の主な企業に行った調査では、約8割が「観光客やビジネス客が増える」と新幹線による経済効果を見込み、経営にプラスになると答えた企業も半数を超えた。一方、「開業を機に取り組んでいること」を尋ねたところ、「特にない」が8割近くあった。

 日本銀行長崎支店の鴛海健起(おしうみたけゆき)支店長は「変化の胎動を感じるが、新幹線はあくまでインフラ。それ自体が富を生み出すものではない」と指摘。「新幹線は大きく打てば響くもの。長崎経済の潜在力をどう引き出すかにかかる」

 新幹線による人の移動がもたらす「イノベーション」に注目しているという。県外と長崎の企業の交流が増え「長崎の企業と仕事をすると『面白いものが生み出せる』と思ってもらうことが必要だ」とみている。

 JR九州にとって、西九州新幹線は採算が取れるのか。

■利用者どのくらい増える? …

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