第3回森田芳光監督の心を捉えた駒鳴駅 2年で去ったブームと住民の奮闘
釆沢嘉高
その駅は山々に囲まれ、田舎の風景に溶け込むように、ぽつんと存在する。
「背景の緑と、黄色い電車の対比がかわいいね」
駅を訪れた一人の映画監督が、そうつぶやいた。2010年、夏が終わりかけていたころだ。
佐賀県の西部にあるJR駒鳴駅(伊万里市)。駅の裏手にある杉の山の緑と、単線ホームに時折やってくる1両編成の黄色い電車。そのコントラストに、監督は目を細めた。
映画「家族ゲーム」や「失楽園」で知られた故・森田芳光監督だった。
監督が駅を訪れた理由は、後に本人の遺作となる映画「僕達急行 A列車で行こう」(12年公開)のロケ地を決めるためだった。
鉄道好きだったという森田監督。映画は松山ケンイチさんと永山瑛太さんの2人が演じる鉄道ファンの友情や恋愛をコメディータッチで描いたもので、九州が主な舞台となった。
「田舎の駅を探している」示された高難度の条件
このとき探していたのは、松山さん演じる主人公と、貫地谷しほりさん演じるヒロインが久々の再会を果たす印象的なシーンに使われる駅だった。鹿児島・指宿の駅も候補にあがっていたという。
だが、森田監督が訪れたその…
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