2万人が手を振った九州新幹線 あの日運転士が汽笛で伝えた思い
貞国聖子
新幹線を運転しながら、徳丸晋作さん(46)は必死で涙をこらえていた。
多くの人が沿線で、新幹線がやってくるのを待っている。
走って追いかける子ども、踊っている人、制服姿の中学生、子どもを肩車して喜ぶ人、傘を振る親子、敬礼する警察官、ウェディングドレス姿の人も……。
大人も子どもも、みんな跳びはねて手を振ってくれた。
九州新幹線の全線開通を20日後に控えた2011年2月20日。開業を祝い、新幹線に手を振ってもらうイベントは、CM撮影を兼ねていた。
朝から冷え込み、雨が降っていた。それに、新幹線はわずか数秒で目の前を通り過ぎる。
「わざわざ手を振ってくれる人がいるのだろうか……」
JR九州の運転士だった徳丸さんはそんな不安を抱えつつ、レインボーカラーにラッピングされたN700系の運転席に乗り込んだ。
午前10時55分、鹿児島中央駅を発車。さっそく手を振ってくれている人が見えた。あれ? また。あそこにも。
運転席に駆け込んできたのは……
すると、バタバタバタと運転席に向かってくる足音が近づいてきた。
駆け込んできたのはいま社長…
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