銚子電鉄が開業100年へ 元鉄道マン迎え、「存続で地域に恩返し」

大久保泰
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 千葉県銚子市内を走る銚子鉄道は今秋、会社設立100年を迎えた。来年7月の開業100年に向け、市と連携して元鉄道マンを経営支援担当に迎えるなど、経営改善を進める。竹本勝紀社長(60)は「存続させることこそ地域への恩返し」と意欲を見せる。

 銚子市内で2日に開かれたまちづくりセミナーで、竹本社長は会社の経営が厳しくなった1998年の出来事から振り返った。当時の親会社の工務店が800億円近い債務を抱えて倒産。「子会社の銚電の存続も危ぶまれた」という。

 さらに2004年、当時の社長の業務上横領が発覚。補助金の支給が停止され、約1億円の債務を社長に代わって弁済することになり、「資金繰りは急速に悪化し、未曽有の経営危機が到来した」。

 経営危機を救ったのが、95年から始めたぬれ煎餅(せんべい)の製造販売。「ぬれ煎餅買ってください。電車修理代稼がなくちゃ、いけないんです」などと呼びかけた。また、自虐的に「マズいです!経営状況が・・」をキャッチフレーズにした「まずい棒」は、販売累計400万本を超えた。

 また、歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんとコラボするなど、話題づくりも積極的に進めている。

 様々な施策を打ってきた結果、今や食品事業が売上高全体の8割を占めるようになった。昨年度決算では、国や県、市などの補助金を受けながらも21万円の純利益を確保でき、6期ぶりの黒字転換を果たした。

 利用客増など今後の経営改善策について、セミナーに参加した江戸川大学の崎本武志教授は「電車を生活の足としてだけではなく、テーマパーク化して観光資源にしていくことも必要」と指摘。大塚良治准教授は「駅に人が集まる施設を設けるなど、駅を目的地にすることも大事」と助言した。

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 今回のセミナーを主催したのは、5月から市地域おこし協力隊員として移住してきた西上いつきさん(35)。名古屋鉄道で電車の運転や指令を務め、その後、鉄道アナリストとしても活動してきた。銚電の経営支援を担当する。西上さんは「地元の人に銚電のことを知ってもらい、外に向かっては情報発信を続けていきたい」と話す。

 就任10年を迎えた竹本社長は、イベント列車を走らせるなど「銚電」の知名度アップに努めてきた。「鉄道以外の収益の柱をさらに広げていく。乗って楽しい日本一のエンタメ鉄道をめざし、『銚電ブランド』に磨きをかける。銚電が多くの観光客を呼び込むことで(開業から)99年支えてくれた地域への恩返しになる」と話している。(大久保泰)

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 〈銚子電鉄〉 1922(大正11)年9月29日、銚子鉄道として設立。翌23年7月5日、銚子駅―外川駅間(6・4キロ)で運転開始。1960年に京成電鉄グループの千葉交通傘下に入る。1990年に経営権が内野屋工務店に変わったが、98年に同社が自己破産。国や県、銚子市の支援を受けながら運行を続ける。

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