安倍政権と「約束」したはずの車関税ゼロ トランプ氏に迫れない事情
米国が輸入する日本車への関税はゼロになる――。政府が2019年9月に第1次トランプ政権と結んだ日米貿易協定で、当時の安倍晋三政権はそんな説明を繰り返していた。だが、その「約束」は第2次トランプ政権で反故(ほご)にされ、今月3日から日本車にも25%の追加関税をかけられた。石破茂首相がこの協定を盾に、米側に強く迫れないのはなぜか。
「(米国がかける自動車関税は)日米貿易協定違反だと明確に言った方がいい」。立憲民主党の野田佳彦代表は5日、記者団にこう語った。トランプ氏との電話会談を7日に控えた首相へのメッセージだった。
日米貿易協定は、環太平洋経済連携協定(TPP)から抜けた米国の要求で結んだ。トランプ氏は当時も日本車への追加関税をちらつかせていた。そこで、日本側は新たな貿易協定で、米国産牛・豚肉への関税をTPPと同じ水準に引き下げると譲歩した。その際、「自動車の追加関税が課されないことが約束された」と説明してきた。
日米貿易協定とは
環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した第1次トランプ政権の意向で結ばれた。2020年1月に発効した。日本側は牛肉など農産品の関税をTPPで定めた水準まで引き下げる一方、TPPに盛り込まれていた米側の自動車関税の撤廃は先送りされた。米国の関税撤廃率は、世界貿易機関(WTO)が自由貿易協定(FTA)に求める水準に達しておらず、WTO協定違反の疑いがある。
だが、石破政権の見解は歯切れが悪い。8日の政府の対策本部でも、首相は「貿易協定との整合性について、深刻な懸念を有している」と述べるにとどめた。加藤勝信財務相も「貿易協定に鑑みて、疑問なしとはしない」とあいまいだ。
外務省が水面下で示す見解
なぜ、奥歯に物が挟まったよ…