「介護は家族がするべきもの」なのか? ヤングケアラーから考える

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聞き手・山田史比古
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 「介護は規範に満ち満ちた領域です」。医療社会学者で、慶応大学助教の木下衆さん(36)は、そう言います。大人に代わって介護や家事を担わざるをえない「ヤングケアラー」の問題にも見え隠れする、家族と介護をめぐる規範。主に認知症の家族介護を社会学の立場から研究し、「家族はなぜ介護してしまうのか」という著書もある木下さんに聞きました。家族はどこまで介護を担うべきなのでしょうか。

「同居家族は福祉における含み資産」

 ――「介護は家族がやるべきだ」。そんな規範意識はいまも根強いようです。

 社会規範とは、法律や制度で決まっているわけでもないのに、なぜか人々が「こうすべきだ」と思っているもの。介護でいえば、誰がするべきか、どのように、どこで……。「べき論」であふれた領域といえます。

 日本は、家族がやるべきだということを基本として福祉のあり方が決まっている「家族主義」の国だとよく指摘されます。1978年の厚生白書が、同居家族を「福祉における含み資産」と明記したことは有名です。

 82年に、当時の「呆(ぼ)け老人をかかえる家族の会」が出した貴重な手記集があります。本当に助けがなく、何もかも「嫁」のせいにされるという話がたくさん出てきて、特に女性が1人で抱え込むのが家族介護だとされていたことがよくわかります。

 一方で、こんな話も出てきます。52歳の娘が、親の介護のため、30年間勤めた仕事を辞めた。いまでいう「介護離職」です。当時はそんな名前すらありません。

 22歳から29歳までの7年間を祖母の介護におわれたという孫娘の手記も載っています。いまであれば、「ヤングケアラー」とも受け止められるようなケースです。

 ――近年注目され始めた「ヤングケアラー」は昔からいた、ということですか。

 重要なのはそこではありません。

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