毛利氏の書状に「鞆夫」、足利義昭を支援か 新資料展示

佐藤英法
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 広島県福山市鞆の浦歴史民俗資料館(同市鞆町後地)は、京を追われて鞆の浦などで過ごした室町幕府の最後の将軍・足利義昭を、戦国大名の毛利輝元が支援したことを示す書状が確認されたと発表した。毛利氏が寺社に負担させた労役「鞆夫(ともふ)」を明記した新史料という。専門家は、鞆夫は義昭に提供されたとみている。広くは知られていない鞆夫についての「貴重な史料」と位置づけている。

 書状は、10月8日から資料館で始まった特別展「鞆幕府 将軍足利義昭~瀬戸内・海城・水軍」で展示している。

 資料館によると、織田信長に京を追われた義昭は1576年(天正4年)から鞆の浦とその近辺を拠点に11年ほど過ごした。「鞆幕府」とも呼ばれる。

 鞆夫は、毛利氏が義昭や鞆幕府を人的・経済的に支援するため、周防や長門(いずれも現・山口県)、出雲(現・島根県)の寺社に課した。

 新たに確認された書状は、毛利氏が家臣に対し、特定の寺家に対して鞆夫を免除するよう指示した内容。1576年から、信長が死没する本能寺の変のあった1582年(天正10年)ごろまでに記したとみられる。

 広島県内に住む男性が所有し、特別展の開催を知って資料館に連絡があった。鞆夫に関する文献・史料としては9通目になる。

 島根大学教育学部の長谷川博史教授(日本中世史)は「鞆夫は、おそらく足利義昭に提供されたものと推測される。(新たに確認された書状は)郡単位で催促・徴発されたことがわかる点も貴重である」とのコメントを資料館に寄せた。

 特別展は11月23日まで。入館料は一般150円、高校生まで無料。11月3日の文化の日は無料。月曜休館、月曜が祝日の場合は翌日休館。問い合わせは資料館(084・982・1121)。(佐藤英法)

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