(時紀行:時の余話)跳び箱に金魚 「廃校」あえて名に

菅沢百恵
【動画】廃校になった小学校の校舎が「むろと廃校水族館」に生まれ変わった=菅沢百恵、柴田悠貴撮影
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 「始業9:00 下校17:00」。むろと廃校水族館の入り口の外側のガラスにそう書いてある。営業時間の案内だ。傍らには学校で使っていた児童用のイスが3脚あった。廃校前の旧椎名小学校に最後に在籍した全児童の数と同じだという。

 館内にある備品はすべて、室戸市内の廃校になった学校などから集められたものだ。教室前の廊下には、水槽が埋め込まれた跳び箱があり、金魚がのんびりと泳ぐ。跳び箱は近くの中学校の体育館から、金魚はさらに隣の小学校の池から「転入」してきたという。

 「この金魚、三高小におったがやと」。市内在住だという年配の女性が、驚いたように友人に話しかけていた。思い出がよみがえるのだろうか。地元住民の姿も多い。「みなさん、懐かしさがあるんでしょうね」。案内してくれた館長の若月元樹さん(44)が言う。

 「廃校」には地域が廃れるというマイナスのイメージをもつ人も少なくない。そんな中、若月さんはあえて「廃校」の文字を名前に入れることにこだわった。

 開館前、水族館の名前入りのシャツを着て市内に出掛けると、「あんなのうまくいかん」「誰もこない」と批判を受けた。だが今では全国から観光客がやってくる。地元では一転、「にぎやかになってありがとう」「本当によく頑張ったね」「市民の誇りです」と温かい言葉をかけられる。

 「廃校という現実を、地元がやっと受け入れてくれました」と若月さん。思い出という地域の財産を残した水族館は子どもたちでにぎわう。週末になると、笑い声とともに2階の音楽室前の太鼓をたたく音が鳴りやまない。

 若月さんには何よりもうれしい瞬間があるという。ウミガメが泳ぐプールのプールサイドに置かれた自動販売機。「子ども向けの飲み物から売り切れているのを見ると最高にうれしい。子どもが消えた場所に、子どもが戻ってきた証拠ですからね」

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