黒田総裁が踏みにじる記者会見倫理 最後も「全く考えておりません」
「そういうふうに全く思っておりません!」
日本銀行の黒田東彦総裁が7日に開かれた最後の記者会見で、私の質問に対して放ったのはこの一言だけだった。説明にもなっていないのだが、これまでの会見で何度も聞かされてきたフレーズではある。ある意味で、この10年の黒田総裁会見を象徴する一言だった。
10年続いた異次元緩和はかなり異常な金融政策だった。その間に日本は戦後最長に迫る景気上昇期もあった。にもかかわらず1度も金融を引き締めることがなかったのだ。
欧米の中央銀行が近年も景気動向にあわせて、緩和と引き締めの切り替えを何度もやっていることを考えれば、おかしさが際立つ。
黒田総裁は会見で、この10年やってきたことは正しかったと強調し、理解を得て任期を終えたいようだった。成功の根拠として説明した内容は、ざっと次のようなものだ。
日本は1998~2012年の約15年間、デフレだった。異次元緩和がしっかり効果を発揮したおかげで、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなった。女性や高齢者を中心に400万人を超える雇用が増加。若年層の雇用環境も改善。ベアが復活し雇用者報酬も増えた――。
その説明は、まちがってはいない。ただし、「都合のいいとこ取り」の説明ではある。
「15年間のデフレ」という…
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- 【視点】
原さんの健闘に敬意を表しつつ、記者会見ってこうだよな、と後輩として思いました。もちろん黒田総裁の対応を是とする意味ではありません。記者会見とは、会見する側とされる側の力の差が如実に表れる場だということです。 広報と報道という言葉が混同し
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