「金融市場の番人」のインサイダー 「父への漏洩」裏付けた極秘調査
藤牧幸一
「金融市場の番人」とされる東京証券取引所の社員(当時)が、株のインサイダー取引に関与したとされる異例の事件。証券取引等監視委員会が摘発に乗り出したきっかけは、口座に残された「タイミングばっちりの取引」だった。
TOB公表直前に購入
社員は、東証に集まった企業の未公開情報を父親に漏洩(ろうえい)したとして、金融商品取引法違反(情報伝達)の罪で在宅起訴された。東京地裁で24日午後、初公判が始まる。
関係者によると、監視委は2024年夏ごろ、ある企業による株式公開買い付け(TOB)の公表直前に、その対象企業の株を購入した証券口座の存在を把握した。
TOBの対象企業は公表後に株価が上昇する可能性が高く、関係する企業は情報が漏れないように保秘を徹底する。
監視委は通常、不正が疑われる取引を把握すると、証券会社などを通じて取引履歴を取り寄せ、ほかにも怪しい取引がないかを分析する。親族、知人との関係なども調べる。
証券口座に記録された株取引は、タイミングが偶然よかったのか、それとも情報漏洩による不正なインサイダー取引なのか――。今回もこうした見立てをもとに内偵調査を始めた。
証券口座の名義人は…
監視委が疑いを強めたのは…