(社説)警察密着番組 問題繰り返さぬために

 テレビ東京が、昨春放送した番組で不適切な内容が複数あったとして謝罪した。

 番組は「激録・警察密着24時!!」。制作会社が手がけ、テレ東が内容をチェックして放送した。人気漫画・アニメのキャラクターの衣服に似た柄の商品を販売したなどとして、会社役員らを不正競争防止法違反容疑で愛知県警が捜査した事案を取り上げた。

 まず、逮捕された4人中3人は放送前に不起訴になっていたにもかかわらず、番組が言及しなかったのは、テレ東も認める通り不適切だった。

 テロップやナレーションでは、例えば「被害者面で逆ギレ」「荒稼ぎする闇組織」といった、名誉を傷つけるような言葉が多用されていた。

 会見で同社幹部は「人権意識は高まっている。そういう点が制作する人間全員に徹底されたか、反省すべきところがある」と述べた。

 警察への密着番組は他局にも多い。視点が警察と一体化し、捜査される側を悪と決めつける描写になりかねないという問題をはらむ。

 今回の番組もそうした面があった。捜査の端緒から逮捕まで節目の場面が放送され、「完全密着」と表示された。しかし捜査会議や商品の確認など署内の映像はほぼ、警察側から「リアルな現場状況」を聞き、警察官の「協力」で逮捕後に撮っていた。

 会見では、問題は「再現」のテロップを入れ忘れたことに尽きる、と主張された。ただ、そもそも「再現」といっても、警察の視点からの再現であることに留意が必要だ。

 利害を異にする捜査対象者がいるのに、「事実」の枠組みをそこまで警察に依拠して組み立てるのは妥当なのだろうか。テレビ局には、権力を監視する役割もあるはずだ。

 責任ある情報の提示という点では、次の問題も地続きに見える。キャラクターを描いた商品を画面に映し、警察官が「これはだめなやつ」と話す再現映像。「あからさまな偽物、中国に発注していた」とナレーションが入る。だがキャラをそのまま描いた商品を発注した事実はないと、捜査された会社側が指摘。テレ東は、情報を十分確認していなかったと認め、謝罪した。

 テレ東は警察密着番組の放送をやめるが、まだ幕引きにはできない。偶然のミスにとどまらない問題の根深さを認識し、同種の問題を繰り返さぬために自浄作用を発揮してほしい。捜査された会社側が申し立てをした放送倫理・番組向上機構(BPO)を含め第三者による検証も必要だ。

 他局でも、同様の問題がないか。点検する好機である…

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