(社説)同性パートナー 保護に踏み出した司法

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 犯罪被害者の遺族を支える国の給付金は、被害者との関係や共同生活の状況によっては同性パートナーにも支給されうる。そんな解釈を最高裁が初めて示した。

 同性カップルの権利の保護を、一歩前に進めた司法判断といえる。

 原告の男性が約20年間生活を共にしたパートナーが14年、殺害された。犯罪被害者給付金を申請したが、被害者と同性であることを理由に不支給となり、裁判に訴えた。

 この給付金は、配偶者や子、親ら近親者だけでなく、「事実上婚姻関係と同様の事情にあった」いわゆる事実婚のパートナーも対象にしている。しかし一審、二審は「同性間の関係は含まれない」として訴えを退けていた。

 おとといの判決で最高裁は、事実婚パートナーも対象になっているのは、被害者の死による精神的・経済的打撃を早く軽くすることが、配偶者と同様、必要だからだとの解釈を提示。その上で、共同生活の相手が異性か同性かで必要性が直ちに異なるとはいえないと述べた。

 好きになる人が同性か異性かは、自分で選択できるものではない。「パートナーを殺害された苦しみは同性でも異性でも変わらないのに、違う扱いをされるのはおかしいと思っていた」。判決後の会見で原告が伝えた当初の違和感は、同じ状況に置かれたらだれもがもつ感情ではないか。

 被害者と同性という理由だけで不支給を決めた愛知県公安委員会は、自らの対応を顧みなければならない。同様の裁定をほかの都道府県がしたり、申請を不受理としたりした例もあるかもしれない。

 今回の判断の影響が直接及ぶのは犯罪被害者給付金の今後の運用だけだが、同様の表現で事実婚パートナーも対象にしている法制度は、遺族年金、労災の遺族補償年金をはじめ200以上あるという。それぞれの給付・サービスを担う行政機関は、同性パートナーをもれなく対象から除外する実務が、判決に照らしてこれからも許容されるのか、考え直す必要がある。

 ただ、そうした給付などを同性カップルにも認める動きが重ねられていく可能性があるとしても、事実婚扱いである以上、法律婚に伴う税制上の優遇などは望めず、同性婚の代わりにはならない。

 同性間の結婚を認めない民法などの規定については今月、札幌高裁が高裁段階で初めて違憲との判断を示した。

 公的サービスを必要とする人に公平に届ける観点からも、同性婚法制化の議論をこれ以上、先送りはできない。

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