(社説)同性婚訴訟 「違憲の法」いつ正す
当事者は日々、喪失感に直面しており、急いで対策を講じる必要がある――。裁判長の真摯(しんし)な呼びかけに、国会はどう応答するのか。
同性婚を認めない民法などの規定が憲法に適合するかをめぐる各地の裁判で初めてとなる高裁判決で、札幌高裁がおととい、憲法14条と24条に違反すると指摘した。
一審の札幌地裁は、法の下の平等を定める憲法14条違反にあたると判断したが、高裁は14条だけでなく、婚姻の自由を定め、婚姻・家族に関する法が個人の尊厳に立脚することを求める24条にも違反すると述べた。
各地の地裁判決よりさらに踏み込んで、国会の責任をただす内容だ。
婚姻の自由をめぐり「両性の合意」という表現のある24条1項について、文言だけでなく個人の尊厳が認識されてきた背景をふまえるべきだとの観点から「人と人との婚姻の自由」を定めたものととらえ、同性婚も異性婚と同程度に保障していると判断した。
婚姻による保護のない当事者たちが「個人の尊厳をなす人格が損なわれる事態」に陥っているとの認定のもと、救済を重んじた解釈だろう。
14日には東京2次訴訟の地裁判決もあり、一審段階の6判決のうち「違憲」が2、「違憲状態」が3と、違憲性を認める司法判断が定着してきた。「合憲」の大阪地裁もいずれ違憲となる可能性に言及し、すべての判決が国会に速やかな対応を促している。
昨年2月に実施した朝日新聞の世論調査では、「同性婚を法律で認めるべきだ」と答えた人が72%に上った。390以上の自治体が同性の2人の関係を認める「パートナーシップ制度」を導入しており、人口カバー率でみると80%を超える。
同性カップルの存在を自然に受け止めている社会の変化に、法制化に向けた議論すら始めようとしない自民党は気づいていないのだろうか。
札幌高裁判決の後、原告の一人は「それぞれ49歳と52歳になり老いも感じ始めた。(法制化が)遅れるほど享受できる時間は短くなる」と話した。東京訴訟では死亡した原告もいる。
高裁判決について、岸田首相はきのうの参院予算委員会で、他の訴訟も進行中だとして「引き続き、判断に注視していく」と述べた。政府・国会がただ見ているだけでは、遠からず不作為を問われることになりかねない。
さまざまな制度は異性間の結婚を前提につくられている。整合性のある法制化に一日も早く着手するときだ。
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