(社説)私大定員割れ 地方の進学機会確保を
入学者が定員を充足できない私立大学が今春、初めて半数を超えた。地方の小規模大が特に深刻な状況だ。
ベースには少子化がある。この30年で18歳人口は4割以上減ったが、私大は6割増加。地方を中心に、定員割れする大学が増えてきた。
加えて、コロナ禍からの解放感で都市部の大学を敬遠する動きが減った。さらに、大手私大が合格者を増やした影響も大きい。国が厳格化してきた入学定員管理について、受験生の混乱を受けて緩和する措置をとったためだ。
私大は、収入の平均8割が授業料など学生納付金だ。大幅な定員割れが続けば経営悪化に直結する。定員を減らしたり、新学部を作ったりしても、打開策を見つけられない大学が多い。
さらに政府は来年、主に低所得世帯向けの修学支援制度の対象から「直近3年度全ての収容定員充足率」が8割未満の大学を原則として外す。入学定員充足率が8割を切るのは全体の26%、155大学にのぼっており、このままでは、大都市と地方の進学機会の格差が広がる恐れがある。
教育への意欲を失い、生き残りしか考えていない大学はある。こうした大学は、在学生を送り出す余力があるうちに、撤退を決断すべきだ。
一方、地方には、筆記試験が苦手な学生を地域の担い手に育てたり、不足する保育・介護人材を養成したりする大学が多い。なくなれば、地域は活気を失い、下宿させる余裕がない家庭の子は進路を変えざるをえなくなる。
国からの私学助成は学生数などに応じて決まるため、小規模大の撤退で浮く金額はわずかだ。日本の将来にとって、地方から大学が消える損失の方がはるかに大きい。
学生確保をめざす大学は立地する地域との連携を強め、存在や特色を認識してもらう必要がある。自治体や産業界、住民らと積極的に関係を築き、研究成果の活用など、特色を生かして地域貢献の策を探ってほしい。
「学び直し」を望む社会人や、意欲ある留学生の受け入れを増やすことも重要だ。18歳で入学する学生と、社会人や留学生とが机を並べることで、互いの学びも深まる。
地方の疲弊が進めば、日本の持続的な発展はおぼつかない。政府には、教育にとどまらない発想が必要だ。
例えば私学助成の額を決める指標に、地域への貢献度を盛り込んではどうか。地元就職率や地域課題の解決に取り組む件数など、国はこれまでとは異なる観点での支援に向け、知恵を絞ってほしい…
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