(社説)自民党大会 教団問題もう忘れたか

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 あれほど深刻な政治不信をもたらした問題をもう忘れてしまったのか。党所属議員と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)とのつながりが、教団の活動にお墨付きを与えたことへの反省はなく、今後は「関係を絶つ」という約束が果たされるのか、疑わざるを得ない。

 自民党大会がきのう開かれた。岸田首相は総裁演説で、民主党から政権を奪還して以降の歩みを「前進の10年」と評し、次の10年への「新たな一歩を踏み出す」として、経済再生や安全保障の確保、少子化対策など、内外の諸課題に取り組む決意を強調した。

 ただ、全く触れられなかったことがある。安倍元首相銃撃事件を契機に明らかになった、教団との関係の清算である。この日採択された党の運動方針にも記載はない。

 茂木敏充幹事長が党務報告の中で、党運営の指針、ガバナンスコードを改定し、「活動の社会的相当性が懸念される組織、団体との関係を遮断する方針を明確にした」と述べたが、教団を名指しすることはなかった。

 この問題を蒸し返したくない、なかったことにしたいという思惑が透けて見える。

 自民党は、自己申告という不十分な形ながら、国会議員については、教団との接点の点検結果を公表している。しかし、地方議員は対象外だ。朝日新聞が昨夏に行ったアンケートでは、接点を認めた都道府県議290人のうち239人が自民党だった。市町村議にも関係は広がっており、教団が進める家庭教育支援条例の制定に力を注いだ議員も少なくない。

 首相は先週の衆院予算委員会で、4月の統一地方選への対応を問われ、公認・推薦候補には宣誓書を提出させるなど、教団と関係を持たないことを約束させていると述べた。しかし、その前提として、過去のつながりを明らかにしてけじめをつけることが不可欠だ。統一選前に、党本部主導で地方議員への調査を行い、結果を公表すべきだ。

 運動方針には「多様性を認め合い、包摂的な社会の実現を目指す」という一文がある。しかし、差別発言をした首相秘書官の更迭を受け、党内論議を再開するとしたLGBT理解増進法案への取り組みについて、大会中、言及は一切なかった。

 首相は演説で、自民党は「国民政党」だと胸を張った。ならば、国民の意識の変化を敏感にくみ取り、政策に生かすべきだろう。選択的夫婦別姓同性婚の法制化に、国民の理解は確実に広がっている。党内外の保守派の意向を優先し、多くの人々の思いとずれるようでは、その自画像から遠ざかるだけだ。

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