(社説)三菱電機不正 「またか」では済まない

社説

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 三菱電機が、自社でつくっている鉄道車両用部品について、品質検査の結果を偽装していた。30年以上続いていた可能性があるうえ、架空データを作成するための専用プログラムまで使われていたといい、問題の根は深い。原因究明と再発防止を徹底する必要がある。

 偽装の対象には、三菱電機のシェアが国内トップの鉄道用空調装置に加え、ブレーキやドアの動作にも使う空気圧縮機も含まれていた。「製品そのものの安全・機能・性能には問題ないことを確認している」というが、鉄道という社会インフラをめぐる不正は重大だ。

 納入先企業だけでなく、その先に多くの利用者がいることを自覚し、社会に対して説明を尽くさねばならない。現時点まで一枚紙の報道発表資料を出しただけで、責任者が会見も開かないのは理解に苦しむ。

 ここ数年、日本の大手製造業で、検査や品質をめぐる長年の不正が相次いで発覚してきた。中でも三菱電機は18年以降、毎年、検査や品質をめぐる問題が見つかり、今回で6回目になる。

 しかも、16、17、18年度と3回にわたって、子会社を含めたグループ全体を対象に、品質をめぐる点検をしている。その度に見逃しが生じていたわけで、経営の責任は極めて重い。

 今回も、外部の弁護士を含む調査委員会をつくり点検するというが、実効性をどう高めるのか。漫然とした姿勢では、信頼回復は到底おぼつかない。

 三菱電機では、従業員の自殺が労働災害に認定される例が相次ぎ、サイバー攻撃による情報流出でも公表の遅れが指摘された。それぞれ問題の質は異なるにせよ、執行を担うトップが現場の問題をどこまで把握できているのか、元外務次官や元検事総長が並ぶ社外取締役が経営監視の役割を果たせているのか、省みるべきことがあるはずだ。

 神戸製鋼所日産自動車で不正が続いた17年、経団連は「国際的な信用、国民からの信頼を損ないかねない重大な事態」として各社に自主的調査や法令・契約順守の徹底を呼び掛けた。経済産業省も同時期に「製造業の品質保証体制の強化」を打ち出した。ガイドラインをつくった業界もある。

 しかし三菱電機だけでなく、日立金属でも昨年、長年の不正が発覚して社長の退任に至るなど、対策が十全だったとは言えない状況が続く。

 ものづくりの会社が品質でウソをついて恥じないようでは、企業や産業の競争力をあれこれ語っても空語に等しい。改めて真因を探り、手を打つべきではないか。

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