(社説)米大統領選 国際秩序を占う岐路だ

社説

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 米国が自国第一主義を続けるのか、それとも、世界の秩序を尊ぶ国際主義に立ち戻るのか。米大統領選は、現地時間11月3日の投票日が迫っている。

 ここまでの選挙戦を振り返ると、コロナ禍でやむをえない面はあったとはいえ、総じて論戦が低調だった。

 特に外交は物足りなかった。米国は今後、国際社会にどのように関わっていくのか。議論が熟さないまま、内向き姿勢のまま選挙戦が終始してしまったことは実に残念である。

 米国内の問題では、地域によっては今もコロナ禍が深まっている。しかし、感染防止と経済対策をどう両立させるか、理性的な論議は乏しかった。

 与野党の対立で、連邦議会は今も経済対策をまとめていない。政治の停滞が国民生活に影を落としているさなかの両候補の非難合戦を、国民はどんな思いで聞いていただろう。

 とりわけ現職大統領のトランプ氏が科学的なコロナ対策に背を向け、ことさら分断をあおる訴えを続けた責任は重い。

 激しい対立のなかで、投開票が無事に進められるかどうかにも懸念がでている。

 言うまでもなく、代表制民主主義のルールに基づき、公正かつ平和裏に政権を選ぶべきだ。暴力的衝突は絶対にあってはならない。すでに民主党州知事の拉致計画が摘発されるなど、杞憂(きゆう)ともいえない状況がある。

 心配されるのは票の集計をめぐる混乱だ。コロナ禍で飛躍的に増えた郵便投票の取り扱いが焦点になっている。

 即日に当落が判明しなかったり、裁判闘争に持ち込まれたりする可能性もある。選挙事務を担う各州政府は、党派ではなく法手続きに沿う公正さを保ち、勝敗を判定するべきだ。

 トランプ氏と共和党は、連邦最高裁判事の欠員補充について指名承認を強行した。司法の独立と中立への国民の疑念が強まれば、統治体制そのものが揺らぐことを忘れてはなるまい。

 最大の問題は、自分の負けになっても選挙結果を受け入れると確約しない、トランプ氏の態度である。どちらが勝っても、特定層の代表ではなく、国民全体を統合する合衆国大統領になることを肝に銘じてほしい。

 米政治の分断による混迷は、すでに経済市場の波乱要因となっている。政権交代に伴う急激な政策変更も、米国の国際的な信頼性を損ねてきた。

 この選挙は、次の大統領任期を超えたスケールで、今後の国際社会の行方をも左右しかねない重大な岐路である。米国の有権者には、できるだけ広い視野に立って賢明な判断を下してもらいたい。

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