(社説)コロナ特措法 課題の洗い出しを急げ

社説

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 新型コロナウイルスの感染が再び広がるなか、対策のための特別措置法を改正しようという議論が活発になっている。

 ところが、どの条文を、いつ、どう見直すのかという話になると同床異夢の域を出ない。全国知事会西村康稔担当相、菅義偉官房長官らがそれぞれの立場で「改正」を口にするが、内容や力点は微妙に異なる。

 5月末に緊急事態宣言を解除した後、安倍政権は市民には第2波への備えを説きながら、国や自治体のそれまでの対応の検証作業を先送りし、議論を深める場である国会も早々に閉じてしまった。この無責任な政治がいまの混迷を招いている。

 特措法に関しては、疑問や批判がいくつも浮上している。

 ひとつは、行政当局が各事業者に休業を要請してもそれに見合う補償の規定がなく、強制力も伴わないことだ。

 先の緊急事態宣言の際は、多くの自治体が独自の判断で「協力金」を支給した。しかし金額は限られたうえ、自治体の財政力の違いによる格差もあって、不満の声があがった。

 西村担当相は、要請に応じない事業者に罰則を科すことを検討すると再三表明している。だが「補償なき罰則」では広範な社会の理解は得られず、感染防止の実が上がるとも思えない。

 菅官房長官は19日に法改正に言及し、補償について「最終的には必要」と述べた。一歩前進ではあるが、検討するのは事態の収束後としていて、いかにも遅い。公衆衛生のために営業の自由を縛るのなら、どんな条件や手当てが必要か。速やかに作業を始めるべきだ。

 国と地方の役割をどう整理するかという、難しい問題も放置されたままだ。

 宣言直後、休業要請の範囲をめぐって政府と東京都の見解が食い違い、初動が遅れたのは記憶に新しい。朝日新聞が6月に報じた全国知事アンケートでは、約半数の21知事が「国の総合調整と知事権限の明確化」を課題に挙げた。政府は自治体に対し、休業要請にあたって「国との事前協議」を求める姿勢を崩していない。知事アンケートでは「迅速な判断や地域独自の判断に制約がかかっている」との回答も寄せられた。

 感染状況や医療態勢は地域によって異なり、現場をよく知る自治体が主体性をもって動くことが何より大切だ。一方で、知事の動きをチェックし、状況次第では歯止めをかけられる機能を用意しておく必要もあろう。

 実際に使ってみて多くの人がその不具合に気づいた法律である。課題を洗い出し、早急に正す。それが国民の生命、健康、財産を守る政治の責務だ。

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