(社説)ふるさと納税 政府の逸脱戒める判決

社説

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 法律に従い、法律によって与えられた権限の範囲内で、誠実に仕事をする。その基本をないがしろにした政府への強烈な警告と受け止めるべきだ。

 ふるさと納税制度の対象から大阪府泉佐野市を除外した総務相の措置を、最高裁は違法として取り消す判決を言い渡した。

 返礼品競争に歯止めをかけようと、政府は昨年6月、総務省が指定した自治体だけを同制度の対象とする改正地方税法を施行。直前に「過去にふるさと納税の趣旨に反する方法で寄付を募った自治体」を排除する大臣告示を出した。高額の返礼品に加え、アマゾンギフト券を付与するキャンペーンを展開した泉佐野市が該当するとされた。

 しかしそれまで返礼品を規制する法的な決まりはなく、総務省が自治体に自制を求める「通知」があるだけだった。

 最高裁は、同市の寄付集めに苦言を呈しつつも、過去の合法的な行いを持ちだして不利益を科すことは許されず、法改正の際の国会審議でも政府から十分な説明はなかったと指摘。告示は大臣の判断に委ねられた事項の範囲を超えると結論づけた。

 後から自分で勝手にルールを作り、それを使って、意に従わない自治体を強引に抑え込もうとした政府が、一敗地にまみれた格好となった。

 もっともこの結果は十分予想されていた。裁判に先立つ昨年9月、国と自治体との争いの解決を図る第三者機関・国地方係争処理委員会も、ほぼ同様の疑義を示して再考を求めたからだ。ところが政府は態度を変えず、混乱を長引かせた。

 そもそも総務省内には、過剰な返礼品競争は「通知」だけではなく、法律でも規制すべきだという声があった。だが、ふるさと納税の拡大を主導した菅官房長官は「総務省が言えば、みんな言うことを聞く」とはねつけ、意見具申した担当局長はその後、異動させられた。

 法の支配への理解を欠き、国会審議を軽んじ、「国と地方は対等」という地方分権の理念に基づいて設立された係争委の見解にも耳を傾けない。他の問題でも見られる安倍政権の強権的な体質が、随所に浮かびあがる。病の根は深い。

 朝日新聞の社説は、ふるさと納税の本来の趣旨は認めながらも、よそに税収を奪われる自治体では行政運営に支障が出ている、高所得者ほど返礼品をたくさん受け取れて税の優遇も大きい――など、今の仕組みの欠陥を繰り返し指摘してきた。

 地方税は「自治体から受ける行政サービスへの対価」という原点に立ち返り、政府は返礼品の廃止を含めて、制度の再構築に乗り出すべきだ。

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