(社説)給付金の委託 政府は疑念に答えよ

社説

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 コロナ禍に苦しむ中小企業に対する政府の現金給付事業で、支給の実務を民間団体に委託した契約の不透明さが批判を浴びている。税金の無駄遣いは許されない。政府は情報を隠さずに経緯を明らかにし、不適切な契約は改めるべきだ。

 1次補正予算に計上された持続化給付金は、売り上げが半減した中小企業に最大200万円を支払う。所管する経済産業省は、電話相談や振り込みなどの事務を一括外注した。官が民間の力を借りること自体は理解できる。問題は、そのやり方だ。

 業務を769億円で契約した一般社団法人サービスデザイン推進協議会の業務を執行する理事8人は、全員が非常勤だ。法で義務づけられた決算の公告も2016年度の設立以来怠ったままで、ガバナンスの不全は明らかである。巨額の契約を結ぶ相手としては不適切と言わざるを得ない。

 協議会は受注額の97%にあたる749億円分を、設立に関わった広告大手の電通に再委託していた。事業は電通が仕切っているとみられる。それならば、電通と直接契約するのが筋ではないか。

 委託先を決めた入札の経緯は極めて不透明だ。

 今回の入札は、価格だけでなく、提案内容なども加味して決める総合評価方式で行われた。不正の温床になりうる仕組みなだけに、通常の入札以上に透明性が求められる。

 ところが、経産省は応札額を協議会の分しか公表していない。入札に参加した別の1社の応札額は、協議会より高いか低いかも明らかにしていない。提案書も非公開だ。これでは適正な評価がなされたのか、外部から判断のしようがない。

 協議会は、経産省の入札に過去4年間で15回応札し、このうち14回と非常に高い確率で受注してきた。「政府と近い業者に不当な利益が流れているのではないか」との疑念を持たれても、やむをえないだろう。

 経産省は入札の詳細を速やかに明らかにしたうえで、2次補正予算案で追加される2兆円弱の給付金では、契約方法を改める必要がある。

 経産省は旅行や外食の消費を喚起するキャンペーンでも、事務委託に最大3千億円を投じる入札の公募を始めた。事業費1・7兆円の2割も占めることを疑問視する声が、野党から相次いでいる。経営難に苦しむ企業への支援が、委託費の分だけ削られてしまうからだ。

 そもそもコロナの感染拡大の第2波が危惧されるなか、キャンペーンの実施を急ぐ必要性は薄い。公募を取りやめ、事業の中身をじっくり見直すべきだ。

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