南海トラフ地震、あなたの周囲では何が起きる? 被害シナリオ初公表
南海トラフ巨大地震の新たな被害想定を受け、大都市や半島・離島など地域ごとの被害を時系列でまとめた5種類の被害シナリオが初めて示された。巨大地震が発生すれば、自分の身の回りはどのような状況になるのか――。少しでも自分事と考えてもらい、防災対策での活用も促す。
中京・近畿圏などで想定されるのは、大都市の被害だ。巨大地震による建物倒壊で多数の死傷者が出るほか、新幹線を含めた鉄道などが止まり、多数の帰宅困難者が発生する。
名古屋市の推計では、最も人が多い平日の午後2時に震度6弱以上の地震が起きると、名古屋駅周辺では約20万5千人が被災し、帰宅困難者は4万3千人に上る。市は周囲のビルや学校などを帰宅困難者が一時的に滞在する「退避施設」として使いたいが、確保するのは3万人分と、必要数の約7割にとどまる。
栄の繁華街、旧耐震のビル多く「倒壊心配」
発生直後には大規模な市街地での火災のほか、非木造の建物の被害も想定される。東海地方一の繁華街、栄地区(栄3、4丁目)では、耐震基準を満たしていない建築物が4割以上を占める。ビルオーナーらでつくる「栄東女子大小路ビル協会」の会長、野田剛司さん(72)は「バブル期に建てられたビルが多く、なかには50年ほど前にできたビルもある。倒壊しないか心配だ」と話す。ただ、高額な費用も必要で、「耐震化するオーナーは少ない」とみる。
津波によって太平洋沿岸の広い地域が浸水し、特に「海抜ゼロメートル地帯」では、逃げ切れずに多くの人が死傷。被災から1週間経っても遺体の捜索が進まず、復旧工事の着手にも時間がかかるとみられる。
三河湾に面する愛知県西尾市は、市域に「海抜ゼロ地帯」が広がる。県の想定によると、津波による死者は約1200人だ。市民団体「一色防災ネットワーク」代表の織田善夫さん(81)は「町内会を中心に支援者を確保し、要配慮者一人ひとりの避難計画をつくる必要がある」と、高齢者や障害者の避難に危機感を抱く。
市は要配慮者らの命を救うため、津波避難タワーを6カ所につくり、今後2年間でさらに4カ所を増やす予定だ。市危機管理課の担当者は「これまでも想定されるさまざまな状況を検討し、対策を練ってきた。避難者数などが変わるようなら、計画の見直しを進めていきたい」と話す。
離島や半島、発生1カ月で人口流出に拍車
中山間地域や半島・離島の被害を想定したシナリオも作成された。能登半島地震の経験も踏まえ、道路や港湾の被害で被災地が孤立し、生活再建が困難になると予想する。
宮崎県延岡市の離島・島野浦島は、住民600人余りで、高齢化率も5割ほどだ。県の想定では、島を襲う津波は10メートル以上と予想され、港も住宅地も壊滅しかねない。
島おこしを目指すNPO代表で、漁業の清田潤さん(30)は「高台への避難訓練はしているが、年々上れない人が増えている」と気をもむ。発生から1カ月で人口流出に拍車がかかり、地域の維持が困難になるとされる。清田さんは「『移住すればいい』なんて安易に言ってほしくない。かけがえのない文化を守りたい」と話す…
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