「楽しい日本」にピンとこない私 総理番記者が考えるジェンダー格差

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南有紀
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 「これからは、楽しい日本を目指していきたい」。肝いり政策の地方創生をめぐり、石破茂首相はこの表現を多用する。「女性と若者に選ばれる楽しい地方に」とも強調するが、その「楽しさ」、どうにもピンとこない。

 1月下旬、「新しい地方経済・生活環境創生会議」が宮城県気仙沼市で開かれた。この日のテーマは「『若者・女性にも選ばれる地方』をつくる」。現地の取り組みには学ぶべきものがあったが、それらをどう政策として生かしていくか、まで踏み込むには時間が足りなかった。だが、次の会議ではすぐに別のテーマに移った。どこまで本気で向き合うつもりなのか、正直、まだ分からない。

 各地でジェンダーギャップ解消に取り組み、会議にも登壇した「Will Lab」の小安美和代表は「楽しい」という言葉について「それこそ、若者や女性に聞いた?って問いたい」と苦笑する。「価値観が多様化する中で」と政府はうたうが、その多様さの解像度が低いのではないか、というのだ。「政治の場には女性が圧倒的に少ない。この言葉が刺さらないのは、その裏側に、子どもがたくさんいて声がたくさん聞こえて楽しい、みたいなおじいちゃんたちの発想が見えてしまうからじゃない?」

 「楽しい」という言葉は、作家・評論家の故・堺屋太一氏の著書からの引用だ。同氏は55年前の大阪万博の立役者として知られる。失礼ながら、その時代の男性の言葉を、これからの女性や若者たちの未来を考えるキーワードにするのは無理がないか。小安さんの話を聞き、「楽しい」を多用する官邸幹部の中に女性がほとんどいないことを、改めて考えさせられた。

 首相自身の言動を振り返って…

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    小室淑恵
    (株式会社ワーク・ライフバランス社長)
    2025年3月16日21時13分 投稿
    【視点】

    総理番記者の視点での記事は、真理をついている。少子化の危機感を何十年も議論されながら、なぜ解決できなかったのか。それは、24時間の家事育児責任を誰かに押し付けて、自分の24時間はいつも仕事に使うことが出来た永田町と霞が関の中心メンバーだけで

    …続きを読む